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蜂の死骸と不死身の言葉。
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「……お前そんな顔できんだな、笑」
初めて見た、と付け加えながら俺は顔を覆うように両手で隠す都をみる。
都は物凄い恥ずかしかったのか肩をふるふると小さく揺らしたままで、その両手の隙間からは真っ赤に染まった顔が見える。
カシャー……
そんな都に思わずシャッターをきると、また都が驚いたように指の隙間からこっちをチラリとみる。
………なんだお前そのポーズ、………
無意識だろうけど、…かわいい、なにそれ、
カシャカシャ、……
「……ふふ、…こんくらいは許せな、?………お前だって俺の寝込み襲おうとしたろ?」
「………………っ、!!!!!」
ニヤニヤしながらあえて都を刺激するような言い方をすると、想像通り都がその言葉に反応してブンブンと真っ赤なままの顔を左右に振る。
ふふっ、……なに、今日すげぇ素直で可愛いんだけど、。
そんな事を思ってまた笑みをこぼしていると、さっきの心拍数のデータをどこかで見ていたのか、ガラララー…!!とすごい勢いで看護師が入ってきた。
「……森さん、大丈夫ですか〜?!」
……こくこくこくこくっ……!!
そんな看護師の問いに、都がまた恥ずかしそうに手で顔を隠して何回も頷くから俺はもうずっと笑いっぱなしだった。
「………っふふ、…全然大丈夫みたいです、焦らせてすいません、」
「………あら、逢坂さんも起きたのね?、…それじゃあよかったけど、…。森くん、具合の方はどう?」
看護師さんの問いに、都が今度はゆっくりと看護師の方を見ながら頷く。
「そう、……本当良かったわね〜〜、逢坂さんが早く連れて来なかったら本当危なかったわよ、…秋口の蜂は動きが活発になってるんだから……、、ましてや死にかけのそれを素手で触るなんて、…………」
看護師はそういって点滴などを変えながらジロッと都のことを細目でみた。
都はその視線に耐えきれなくなったのか気まずそうに目を伏せ、そしてその流れのまま俺をキッ!!と睨んできた。
…いやいやいやいや、…確かに俺が全て話しましたが、…はっきりいってお前が触ったことが全ての始まりなんだからな!!!!!
俺は素直に救急車を呼んで、俺は素直に医者に聞かれたことを話しただけ!!決して悪くない!!
「そうでちゅよ〜〜、蜂を素手で触るといたいいたいになっちゃうんでちゅよ〜〜、これからは気をつけまちょうねぇ〜〜。」
「…………………っ!!」
ぺろっと舌を出しながら手を顔の横でヒラヒラさせて都に向ってそういうと、都があからさまに怒った表情を俺に向ける。
…怒ってる、
素直な怒りの表情。
「………っ、ふふ…ッ!……かわいいなぁ、お前、」
いつもがポーカーフェイスだから。
今までなんの感情も隠していたから。
そんな都の素直な怒りの表情に俺は思わず顔が緩んでそう言葉を溢す。
…………なんつーの、?…野良猫が徐々に懐いていくような、…徐々に自分を見せてくれるような、
「……………っ、?!」
都はそんな俺の発言に中途半端に口を開き、アニメみたいに目をパチパチさせる。
…なんなのこいつ、…ふふっ、………
…なんかこの前、キラキラした笑顔で俺に話しかけてきた女の子をみて、(都もこんくらい分かりやすければなぁ…)…なんて思ったりしたけど、
もしかすると……本当はこいつ、すげぇわかりやすい奴なのかも、。
…まぁ普通に考えればそうだよな、
…喋れない分の感情は消えるわけじゃない、その分普通の人よりも身体の一部にその感情が浮き出るはず。
身体は素直だから、。
"あんたにはあの子の声が聞こえてるんじゃない?"
おばちゃんに言われたあの言葉が頭をよぎる。
…あ〜……おばちゃん、…そうなのかもしれねぇ、…
…前はピンとこなかったけど、…今だったらわかる、
他の人には伝わらないこいつの感情を、俺なら読み取ることができる気がする、。
……つーか、こいつのその声のない言葉を俺は聞きたい、
………他の人には聞こえないその声を、…その無言の救済に俺は気づきたい、…………
…なんて、……俺は何言ってんだか、、。
……でも、…ふと昨日の都を思い出す、。
必死に息をして必死に俺を掴む都。
……本当は普段からああやって助けを求めているのかも、。……心の中の声を必死に伝えようとしてるのかも、。
………まぁ、やっぱり本当の事は言葉で伝えてもらわなきゃわかんないけど、……
ちらっと都の方を見ると看護師さんになにか説明を受けているようで注射器のようなものを手にしながらこくこくと頷いていた。
……まぁとりあえず今は助かってよかったってことを素直に喜ぼう…、。
俺はそんな都たちをみてふふった優しく笑みをこぼした。
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