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実際
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「………………………………。」
兄さんはどうやら、メンタルが鋼のように強いのだろう。もしくは何かが原因でステンレスがものすごく固くなったようなメンタルをしてるのだろう…。
とにかく、経験者がこういうのだから反論をするための言葉など見つかるわけもなく……。
「……あと2、3日考えてみるよ…。」
そう言って俺は、兄と夕食の準備を始めた。
兄は料理が上手い。毎日手伝ってるけど、ここまで手際は良くない。テクニックと経験なんだろうか。
俺は、帰りに買ってきた野菜や卵、肉やらを取り出し、必要なものは出しておいてあとは冷蔵庫やらにしまう。
隣でトントンという包丁の心地よいリズムが聞こえる。
「そういえば時雨さ、歌うまいよね。」
「え?そう?」
唐突な兄の褒め言葉。兄の方が上手いだろうに……。
「ほら、この前カラオケ行ったじゃん?あの時俺ね、すーっごい聞き入っちゃった!」
「へぇ…なんか嬉しいな……」
大学にも夜間頑張って行く兄、俺をちゃんと見ててくれる兄、俺と遊んでくれる、俺を褒めてくれる…実の兄。
これほど嬉しくて幸せだと、いつものように家族がいる家庭で思うことはあるのだろうか。
親はもう居なくても、兄がいる。
俺には分かる、この、当たり前だけど当たり前じゃないことの、幸せさが。
「……ねぇにーさん。」
「ん?」
「そーいえばさ、今日のLHRで宿題出たんだよね」
「へーぇ、珍しいね?」
「うん…それで、内容がね、小学生じゃあるまいしって感じなんだけど」
「ぅん?」
「……自分の家族の作文を書いてこいって。」
「……ぉー…。」
「どう書けばいいかな?…まさか俳優だなんて口が裂けても言えないし…。」
俺が悩んでいると、横から兄さんの安心する声が聞こえた。
「言ってもいいんだよ?…でも、それで時雨が辛い目に会うならオススメなんかしないけど…。包み隠さず言ってもいい。俺、別に本名がしれたってどってことないし、……時雨の家族って誇りがあるから。」
兄さんはどこまでも大人だった。
まだ18なのに、何もかも悟ったような……。
だけど、そんなにーさんが居るから俺は、今こうやって安心しているのかもしれない。
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