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愛じゃよ
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「緑くん…水槽から出たことないのに、よく分かるね」
「本能じゃ。」
「へぇ…」
兄さんがご飯を準備しているあいだ、待たされている俺はベタと話すっていう不思議な現象にあっていた。
「でも同性愛もいいっちゃいいよね、自由の証明みたいで。」
「ほう?」
「だってさ、恋愛って異性とじゃなきゃって概念に囚われててさ、なんか自由な感じしないじゃん。」
「なるほどのぅ、」
「でも緑君たちって、他の雄とは本能的に戦っちゃうんでしょ?」
そう、 ベタは闘魚。
オス同士は、一緒にいるとどちらかが死ぬまで争い続ける。
そんな彼らに同性愛を語られる、なんてね
「まぁそうなんじゃが…。ワシは昔、若かった頃は、メスよりもオスの方がよかったわいのぅ」
「え?そうなの?」
「ワシはの、メスはめんどくそうて嫌いなんじゃよ。」
「へぇ…人間と似てるんだね」
俺も女は嫌い。
イケメンと見るとすぐに集ってくる。
俺はイケメンではないけど、自分の欲を満たそうとして擦り寄ってくるのが分かる
もう秋だ。
夏はとうに過ぎた。
少し肌寒くなってきて、少し…寂しい気持ち。
よく分かんないけどこれって、昔の俺の記憶からの物なのだろうか。
ここに来て、もうすぐ2年になる。
兄さんと過ごした時間、本当は皆16年なんだろう。
でも、俺は血の繋がった家族といた時間は2年、まだたった2年…。
でももうどちらも大人。
俺は好きな人なんて居ないけど、兄さんはいたっておかしくない。…最近、上の空だしね…。
「しぐれー!ご飯だよー!」
そんなことを考えてるうちに、ずいぶん時間が過ぎていた。
呼ばれて返事をし、下に降りる。
「あーおなかすぃ…た、…!?」
「じゃーん!ハッピーバースデー、時雨!」
「へっ?えっ?えっ?あっ」
「まさか忘れてた?今日は10月16日だよー」
兄さんは笑顔で祝ってくれた。
施設の時も皆に祝ってもらえたけど、…でも、兄さんはなんだか…嬉しいって言葉じゃ表現しきれないくらいだった。
料理につけてあったプレートには、何か文字が書いてあったのに、目の前が歪んで濡れて、上手く読めなかった。
「えっ、な、泣かないで!?えとっえとっ」
「ありがとぉ、にーさ、ありがとぉ、」
「う、ぇへ、喜んで貰えて良かったよ、…食べて?」
「うん!」
この日俺は、家族のありがたみと大切さが身に染みてわかった気がした。
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