アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
美男美女
-
「ねぇあなた。可愛いわね」
「そうだな。」
「どんな名前にしようかしら」
「そうだなぁ……なぁ、葉っぱに付いた朝露の雫って、綺麗だよな。」
「そうねぇ。昨日は雨だったものね、今日の雫は一段と綺麗だわ」
「そんな日に産まれたなら……そうだな。……雫とか」
「ふふ、私も思ってたの。」
「そうか。よかったな雫」
「今日から貴方は」
雫よ
――――――――――――――――――――――――
母さんのことも、父さんも、実のところよくなんて覚えてはいない。
大きくなってから、三歳の頃にとった写真でしか、二人を見たことはない。
「うお、すっげぇ綺麗じゃん」
「でしょ?」
「なんか……兄さん似てるかも、母さんに」
「だね、時雨も似てるよ?」
「え、まじ!?」
「うん。父さんのが似てるかもだけど、目とかかーさんかな」
「ねぇ、なんて名前なの?」
「母さんが真希で、父さんが望。二人合わせて希望組!だってさ。……俺にいつか、言ってたの。あやふやなんだけど。」
「……そっかぁ。」
弟であり恋人の時雨に、親の事について話していた。
弟はまだ0歳だった。でも、お金の問題で、きっと幸せには暮らせないって。ならいっそ、お金のある優しい人に拾われて欲しいと。母さんたちはそうやって橋の下に消えていった。
弟は知らないだろうけど、母さんたちが死ぬ前に何も残してないわけじゃない。けど、時雨に見せる気はなかったみたい。……せめて見せるなら、ある程度大きくなってから、ってことかな。
正直、俺はホントは死ぬはずの人間で、
時雨の前に居るはずはなくて、
要するにこの恋もない。きっと今頃、順調に死んでいたら地獄にでも行って母さんと父さんと叱咤を受けてるだろう。
……もう、見せてもいいだろ。な、母さん。
「ねぇ時雨」
「ん?」
「そんな君にまたサプライズ。」
「え?」
「母さんからの手紙だよ。」
「……へ?……かあさん……の?」
「うん。ほらほら読んで」
「う、うん。」
弟は、その手紙を開いた時にふわっと香る、紙の匂いではない、安心する香りで包まれた。
その手紙を、読み上げる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
28 / 51