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原点
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朝起きて、ふと横を見るとあの綺麗な寝顔の兄はとっくに起きていて、朝食を作っていた。
今日は出かける用事があるし、早く支度しなきゃな。
因みに、先生には言ってあるが、あいつらには言ってないんだ。……まぁ、朝から盛ってるとかそういうのは無いだろうけど……。
そもそも付き合ってるのかどうかすら分からないからな。
「おはよ、時雨」
「おはよーにーさん」
「今日出かけるんだよね? 歩き?」
「うん。天気もいいし」
「そっか」
そのまま朝食を食べようと、足元を見ていた視線をふと上に上げる。すると、兄さんがギョッとした顔でこちらを見てきた。
「え? なに?」
「時雨……カラコンなんていつしたの?」
「は?」
「え、だって……え??」
「……??鏡鏡……」
その辺にあるであろう手鏡を探す。
俺は目は悪いほうじゃないから、いつもならすぐ見つけられるんだけど……なんだか今日の視界は余り良くない。
寝起きだからかな?
やっとで見つけた手鏡で、自分の顔を確認する。
「……え?」
そこに写ったのは、目の色が普通の色素ではない俺がいた。本当にカラコンを付けたような目。
宝石みたいに綺麗だった。見たこともない目だ。
「……時雨、視界はどう?」
「そういえば何だかぼやけるような……」
「……まぁ…きっと色素が薄くなってるんだ、深刻じゃ無いはずだから、時雨が帰ってくる頃連絡して。そしたら眼科行こう?」
「う、うん……?」
兄さんがあまりにも冷静なので少し驚くものの、そういえば兄さんも目が青いんだったと思って納得した。
けど、要するに俺は後天性なはず。こんな事もあるんだな……。
とりあえず、朝食を食べて、着替えて、歯を磨き顔を洗う。
改めて顔をよく見る。
自分からしたら普通並みの顔、黒い髪の毛、そして……
違和感を放つ、角度で色の変わる瞳。
左を向けば黄緑色、正面を向けばレッドジルコンの様に真っ赤な色、右を向けば海よりも深い青。
確かに綺麗で、この色は好きだけど……正直周りから何か言われそうで怖い。
でも、ここで戸惑ってたって仕方が無いので、諦めて外に出ることにした。
よく良く考えたら、ここは東京だ。
カラコンして歩いてる人なんてそこら辺にいる。怪しまれることはないだろう。
マスクとかはしないけど、絡まれることもないし。
まずデビューまであと何日ってくらいで、実際デビューしてないからねー。
玄関を出て、涼しい気持ちいい風に当りながら歩く。
すると、耳鳴りがした。
昔から耳鳴りっていうのは、霊がそこにいるって暗示らしい。……今俺がどこを歩いてるかって?
……地下道だよ地下道。
薄暗く、少し湿っけがある、音の響く地下道。
……こわい!!!!
でも、なんか居そうな雰囲気はした。
ふっと風が通る。あまりにも冷たい風だ。
……もう、思い切って振り返った。
そこには……
「おっはっよーーーしぐしぐーーーー?」
「っっっなんだよぉぉおお母さんかよぉぉおお」
「えー、怖いお化けかとおもったー?大丈夫だよーそういうのは全部殴り殺してるカラー」
「それはそれでゴリラなの????」
さらっとゴリラみたいな発言をした母が立っていた。怖いのじゃなくて良かった……
「あれ?父さんは?」
「んー?望ならシズシズのとこだよー」
「まさかの分担制」
「シズシズおばけ見えないからー、ママ暇だしシグシグについてくーって言ったのー」
「へ、へぇー……」
母は楽しそうにそう言って俺に付いてくる。
地下道を抜けて、また暫く歩くと、やっと施設が見えた。
久々だなぁ……。
俺は、施設を目にして、変わらない景色に目を細めた。
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