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我慢はあまり良くないよね
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兄さんと寝たいけど…言い出せない……。
すごい無理……恥ずい……。
俺は手作りピカタとスープを飲み、暖かさでこの気持ちを誤魔化す。目の前で美味しそうに笑顔で俺の手料理を頬張る兄はすごい可愛いし、なんというか、ほんとうに愛おしい。この人が俺の家族で恋人だと思ったら、優越感が半端じゃない。
「あ、雨」
「ホントだ、最近寒くなってきたよね」
「だよね。時雨ももう少しで2年生かぁ。なんか、こんなに一年経つのって早かったっけ?」
「さぁね。でもさ、充実してんだね、早いって事は。兄さん大学どう?あと二年あるけどやってけそう?」
「大丈夫、教授も分かってくれてるし、講義の時間も自分なりに工夫して取ってるから」
「そっか。すごいよなー、理系とかぜーーったいむりむり」
「はは、得意不得意ってやっぱあるよねー。ていうか時雨は何目的で総合に入ったの?」
「ん、生活福祉科でて社会福祉士かもしくは児童福祉司になりたくてさ、予備知識が欲しかったの。……でもなー、実習とか多い専門学校だと、仕事と被るから……無理だなー」
そうやって何気なく学生同士らしい会話をする。恋人とかの雰囲気なんて微塵も感じなかった。本当はおれだってもっともっと兄さんとこう、らぶらぶしたいし、いちゃいちゃしたいし、でもどこかでブレーキがかかって、踏み越えられない。
楝と昴、美琴と未來、Rioさんと奈津さん。俺の周りにはそういうカップルがやたら居る。でも皆恋人らしく、仲良く、ブレーキがかかることが有るのか、分からない。
楝の話も、たまにする美琴の惚気も、奈津さんの幸せそうな横顔も、俺にとっては心に刺さる槍みたいに痛い。羨ましいだけなのだ、だけどそれが酷く重たくて酷く痛い。
父さんと母さんにもそれが伝わっちゃってるのかな、凄く心配してくれる。緑くんも紫苑も、最近はやたらと優しい。……優しくしてくれるのは凄く嬉しい、だけど……
1番揺さぶられてほしいのは兄さんなのに……。
進まない箸は、進まない食欲に構わず機械的に動く。兄さんになんてこの気持ちを伝えよう、伝えていいのかな、……何も、思わないだろうか。いやそんな訳はない、兄さん優しいから。……でも、それで兄さんが責任を感じてしまったらと思うとこわい。好きって気持ちがこんなに難しいものだなんて知らなかった、好きな人なんて、出来たことなかった。
美琴に聞いてみようかな、アイツならきっと……。……なんと、言われるだろう。内心で笑われたりしないだろうか。恋人なのにと、ほんとうに?って。
「時雨?どうしたの?」
「えっ、な、なに?何でもないよ?」
「そう?なんだか暗いからさ……。何かあったら言って?ね?」
「うん、大丈夫」
俺、なんで強がっちゃうんだろう。大丈夫じゃあないのに。ホントは聞いてほしいのに、口が開かない。言いたいことを言わせてくれない。
*
「紫苑」
「んだよメンヘラ」
「は、メンヘラとかお前引きちぎるぞ」
この苛立ちの行き場がなくなる。紫苑に当たってしまう。悪いとは思ってる、でも紫苑は多分、分かってて喧嘩ふっかけてくるんだよな。素直じゃねーやつ。
「で、お前ちゃんと言えたのか?一緒に寝よーってさ」
「い、った」
「ふん、ならいいじゃねーかよ。なんでこっちの部屋いんの?」
「今風呂入ってんの」
「さっさと隣いけっつの。緑のオヤジと話してろよ」
「はいはい。……紫苑」
「なんだ」
「ありがとな、いつも」
「あ?……べつに、イラついてんのなんかいつもだろ。我慢してんじゃねぇよガキのくせに」
「ガキですはいはい。……じゃ、おやすみ」
「おう」
紫苑におやすみを言って隣に行く。すると緑君はまだ起きていた。
「なんじゃ、今日はこっちで寝るのかの?」
「うん」
「ならばワシはさっさと眠りに落ちぬとなぁ、邪魔になってしまうのぉ」
「?」
「性交を見られるのはどの生き物でも恥ずかしいもんじゃ」
「はぇあっ、や、その、す、するか分かんないし」
「しかしじゃ、大丈夫大丈夫、ワシは雫が自慰してるのを何度も事故で見てしまっとるでの」
「ビデオ欲しいです」
「ほんにお前さんは雫オタクじゃのー」
「我慢はするもんではないぞ」
紫苑にも言われた言葉。我慢、か。兄さんにやっぱり、言ってみよう。我慢は良くないもんね。
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