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勇気
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風呂に入って少し気が軽くなって、
俺は気付いたら鼻歌を歌っていた。
曲はあまりメジャーじゃない歌手のだったからか、
望勇は知らない様子だった。
…TVもしらない望勇にとっては、
有名な歌手の歌も通じないんじゃないか?
そんな残酷なことを思ってしまい慌てて頭を振る。
こんなこと思って悪いっ…!
とばれない程度に手を合わせてそいつをみると
そいつは桶をガン見していた。
そろぉ〜と手を差し出し、あと10センチの所で
手を引っ込める。
…それを繰り返してた。
「それ、もう冷えただろ。お湯入れ替えるか?」
せっかく触ってもぬるいのじゃ意味がない。
むしろ、それがお風呂のお湯だと信じて湯つぼにはいって、騙されたと思われると困る。
そう思ってそう言うと望勇は小さく首を振った。
「ボク…お風呂に手ぇいれたいです…」
少し上目使いでそう言うこいつは、
イスから立ち上がりこっちに来ようとする。
「ばかっあぶねぇから」
ヨタヨタの足を見て慌てて身体を支えにいくと、
思ったとうり転びそうになった。
「しばらくは俺に頼れ?」
そう言ってイスを浴槽の近くに置いて、手を入れればすぐ触れる距離に望勇を置いた。
プルプルと手を震わせて唇を固く結んで、
ゆっくりとお湯に手を伸ばしていく。
怖いものを必死に克服しようとしているそいつは
すごくカッコよかった。
あと10せんち…
5せんち…
3せんち…
2……
1…
「っ…ぇ、あったかい…ほかほか…」
触れた瞬間そいつは息を飲んだ。
やっぱり怖かったんだ。
けど
驚いた顔をして「あったかい…初めて…」そうつぶやいて俺を見つめ、ポロポロをそいつは涙を流し始めた。
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