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プロローグ
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『じゃあ、行ってくるぞ。充成(みつなり)頼むな。佳成(よしなり、)夜更かしするなよ。あとは…』
『っわかってるよ、父さん。電気にガスに戸締まりでしょう?僕もよっくんも父さん達が出かける度に聞かされてるんだから。』
父の言葉をクイ気味に引き受けた長男の充成はまったく、と言った感じの苦笑いで玄関に立つ両親と歳の離れた末の弟を見やる。
『いやいや、今日はもうひとつあるぞ!佳成の宿題だ!父さん達が帰るまでに少しでも終わらせておけよぉ。わからなければ充成がいるんだ、聞け!』
『わかってるよ!…ったく、大体宿題さえなけりゃ俺も一緒に行けたのに…』
『夏休みの前半に遊びまくってたツケだ。』
父はビシッと次男をさしていつものお小言にオマケをつけた。
自分を指す父の手をパシンと払いながら佳成がふくれ面で応える様子をニコニコと見守る母と末っ子、雪成(ゆきなり)。
『ってゆーか、母さん、そんなポヤンポヤンで雪成の面倒見れるのかよ?』
父には勝てぬと判断したのか、佳成は矛先をニコニコな母に向けた…
…が…
『あらぁ、大丈夫よぉ~。ゆきちゃんは誰かさんと違って宿題も終わってる良い子だもの』
『……』
反撃されて何も言えなくなってしまった。
『アニキぃぃ』
父どころか母にも言い負かされた半泣きの視線を受け、更に苦笑いが深まるが、佳成の気持ちも解ると感じた充成はバトンを受け取った。
『母さん、本当に大丈夫?ゆっくんに風邪とかひかせないでよ?薬持った?少しキツイくらいなら我慢しちゃうから、ちゃんと見ててあげてよ?途中、休憩して、トイレも………』
雪成は体が弱く、入退院を繰り返す事もしばしばで、オロオロとする母と一緒に弟の世話をする充成や佳成は気が気ではない。
普段は母に似てか、ほんわかな雰囲気でゆっくりとしゃべる充成が雪成の事となると矢継ぎ早に言葉を重ねてくる。『わかってる』と言っても(ゆっくん注意事項)は延々と続くのだ。
『あん!もぉ。みっちゃんお父さんみたいだわ!これでもお母さんよ!?』
耐えきれなくなった母がそう言うと、一家は一瞬時を止め、次の瞬間には吹き出していた。
『アハハ…可笑しい…充にぃも佳にぃも、雪は大丈夫だから心配しないで?今、雪は元気だし、それにそれに…宿題終わってる良い子だもん!』
それまでニコニコと家族を見上げて話を聞いていた雪成の無自覚なトドメの一言に佳成はうなだれ、また笑いを誘ったのだった。
『じゃあ、行ってくる』『二人とも良い子にね』『いってきまーす!』
『『いってらっしゃい!気をつけて!』』
夏の終わりにあった、家族最後の時間…
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