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子犬
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やらないとまたゴリラに殴られる。それが嫌なだけだ。
卓球は、したことが無かった。
俺はしゃもじみたいなやつでオレンジ色の球を叩き続けた。
ルールがよくわかってなかったからか途中で何回か流れが止まったけど、その度に俺の横に居たやつが教えて来た。
一々怒らせるのも面倒だったので真面目に聞いて覚えた。
そこからはスムーズに流れた。
点数を取ると勝手に一人で盛り上がって俺に手のひらを見せて来た。
叩くものだと知っていたけど、触りたくなかったから知らないふりをしたり見なかったふりをした。
向かいに居た二人に少し睨まれた。
卓球が終わった。
「ふぅー、久しぶりに動いたー。でも楽しかったな、明石ナイス」
質問では無かったので何も言わなかった。
「それじゃあ各自片づけ。今日はそのまま解散」
あーい、とけだるそうな声が揃った。ゴリラは何も言わない。
「これさー四人もいる?」
「二人で良いっしょ、じゃんけんしよーぜ」
「えー、みんなでやらねぇの」
「あーまぁあれだ、転校生への洗礼だよ藤宮君」
「そうそう、折角だし物の場所も覚えちゃうって事で」
「ぅえー何かずりー。明石―、どう思う?」
「じゃんけんで決めよう」
ここで言い合う事が不快だったので拳を突き出す。
「諦めろ、藤宮」
「ま、勝てばいーんだよ勝てば。ほら、さーいしょーはぐー・・・」
あーあ、負けた。面倒臭い。一人でやろう。
「あぁっ、負けたっ・・・二人とも。残ってくれる、よな?」
「勝負の世界は厳しいんだよ」
「おっさきー」
「薄情者ー・・・はぁ、ま、いいや。明石、頑張ろうぜ」
「俺一人でやるから帰って良い」
「は?い、嫌でも一人じゃ流石に時間かかるし」
「この後の昼休みは俺いつも時間持て余してるから。別にいい」
「え、あ、でも、俺、ほら、じゃんけん負けたしやるよ。俺ネット外すから、明石はラケット宜し
くな」
子犬みたいな顔したやつが、子犬みたいに図々しく事を進める。
子犬は好きなのに。こいつのせいで嫌いになりそうだった。
「・・・ふぅ、おーわりっ。さっさともどろーぜ」
戻ろうと思った矢先にそう言われて、不愉快になる。
俺が誘われて動いたみたいになる。こいつは多分それが嬉しいんだろう。
無言で横を通り抜けた。ガキみたいで少し苛ついた。
「あ、明石、無視すんなよ」
「してない」
「して、ないけど。その、もうちょっと仲良くしたいって言うか」
俺は口ごもる子犬をご要望通り無視して歩いた。
着替えが終わり、机を動かして窓際にぴったりとつける。
雨の音が聞きたい。窓を開けたら匂いも入って来そうだ。
でも開けたら音がしなくなる。
俺は窓を開けずにコンビニのおにぎりを取り出した。
目に入ったのを適当に選んだ。
梅が二つだった。
梅干しは嫌いだ。今日嫌いになった。
あいつが酸っぱいのが好きだと言ってたから。
捨ててしまおうか。それはそれで嫌だ。
俺はおにぎりの包装紙を破った。
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