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関係ない
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「な、なぁ」
雨の音が別の音で遮られた。
振り向くと子犬がいた。
「あの、さ、よかったら、一緒に飯食わない?」
「食べない」
俺はまた窓を眺める。
教室の空気が少し変わった気がするが構わない。
ぶつかった雨粒が窓に溶けて他の雨粒と混ざる。
「い、いいじゃん?食べよーぜ、ほら、来いよ」
腕を掴まれる。誰に?考える事が不快だ。
「聞こえなかったのか?」
「え?」
何だ、聞こえなかったのか。
「食べない。聞こえたか?」
教室の空気が更に変わった、俺を見る視線が多い。
「あ、あぁ、それは聞こえたけど、でも、えっと」「なぁいいじゃねーかよ」
子犬の後ろから見たことが有る顔が生えて来た。名前何だっけ。
「転校初日なのにこんなに一生懸命頼んでんだぜ?来いよ、飯食うだけだから」
「俺は質問に答えたんだけど」
「は?何それ」
「お前に関係ない」
あ、思い出した、新沼だ。何でこいつ俺の事睨んでるんだ?
「はーいはい、怒んな怒んな。明石、飯食うだけだって、何がそんなに嫌なの?」
「俺は食べてる途中だから、今から移動するのは面倒くさい」
こっちは、矢部だ。こいつは嫌いじゃない。頭がいいから。
「あー、まぁそりゃそうか。藤宮、今日は諦めろ」
ほら。やっぱりこいつは嫌いじゃない。
でも子犬は動こうとしない。何だこいつ。
俺は初めてちゃんと顔を見た。
さらっさらのこげ茶の髪に、小ぶりな頭、大きな目。
肌は小麦色に焼けてるけどつるつるしてる。子供みたいなほっぺただ。
注目していた顔の中心が開く。
「・・・明石はさ、その。違ったらごめん・・・俺の事、嫌い?」
「嫌い」
答えた瞬間、膨張していた空気に穴が開いたように、俺への非難が噴出した。
「明石何様?」「ほんとそれ、藤宮君が一生懸命話しかけてるのにさ」「あいついっつもあんな感じじゃね?」「マジうざいわ」「授業中とかも寝てるよね」「何しに学校来てんの?」「こなきゃいいのにね」「あーあ、藤宮君かわいそー」「マジあいつ学校くんなよ」
「ぁ、あの、いや別に俺、だいじょぶだから」
お前のせいだろ。何言ってんだ。
「藤宮めっちゃいいやつなの分かるけどさぁ、今のは怒って良いだろ」「言いたいことは言わねぇと駄目だって」「そいつどうせ何言っても反応しねぇし」「神経通ってないんじゃないの」「あり得るな、だってこいつ虐待されんだぜ」「え、何それ?」「身体にいっぱい傷が有んだよ」「うーわマジかよ、何、こいつの親父にやられてんの?」
頭に一気に血が上り、視界が赤く染まる。
父さんの事を悪く言うやつなんて死ねばいい。
立ち上がり、発言したであろうやつの所に行く。
拳を握って振り上げたら、誰かに止められた。
「ちょ、落ち着けってっ、明石っ、ごめん、俺が悪かったからっ」
子犬だった。
やっぱり図々しくて、俺の手を掴んで離さない。
「は、何。図星でしたか?」
そんなことはどうでも良い。
「あ、おいもう止めろってば、ほら、明石こっち来い」
子犬に引きずられて教室の外に連れて行かれる。
「・・・ふぅ、明石、その、俺も強引だったけどあれは駄目だって、殴ったらお前が悪者になるじゃん」
「だから何だ。お前に関係ない」
「でも」「お前に関係ない」
こいつは二回言わないと日本語が理解できないみたいだ。
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