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キス
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「ここ。痛くなかった?」
「首?・・・あ、あぁ少し髪抜けたかもしれないけど、そんなには」
「そう・・・太一兄さん。さっきの続きだけどね、カツアゲした相手がお金持ってなかったら何されると思う?」
「・・・殴られたりとか?」
「それが分かってて、さっき大丈夫って言ったの?」
光の手が爪を立てて、首を軽くひっかき始める。
「ああ、別にその位なら怪我してもすぐ治るだろうし」
「治るから良いとかじゃないよ・・・太一兄さん、僕には太一兄さんしかちゃんとした家族が居ないんだよ?太一兄さんが怪我するだけでもすっごい不安になるんだよ?分かる?」
そこまでは・・・考えていなかった。
自分が居なくなっても、誰も困らないと思ってたから。
「悪い、光が嫌ならもう言わない」
「言わないだけじゃなくて、ちゃんと気を付けて」
「分かった、気を付ける」
「ほんとに?」
「本当に」
「・・・じゃあ太一兄さん危ない人とか見分けられるの?」
「それは出来ないけど、でもどうしようもないし」
「僕も手伝うよ。例えばさっきの二人、二人とも髪染めてたし片方は耳にピアスも開けてた。
ああいう人は太一兄さんとは気が合わない。
もし近づいて来たら興味本位か、何か変な事企んでる人だから気を付けてね」
会ってからずっと俺の心配ばかりしている光が言うのならきっとそうなのだろう。
俺はさっきの二人の顔を思い出して、気を付けようと思った。
そんなことを考えていると光が首をひっかくのを止めて、ゆっくりと顔を近づけて来る。
どうしたんだろうかと思ったら、そのまま唇が何かに触れた。
「・・・光?」
「ん?」
「どうしてキスしたんだ?」
「ただの愛情表現だよ、僕が太一兄さんの事大事にしてるよって証拠。あ、そうだ。太一兄さんもしてよ」
「俺がお前に?でも」「太一兄さんは僕の事大事じゃないの?僕のたった一人の家族なのに、その太一兄さんは僕が居なくてもいいんだ、どうでも良いんだ」
光がまた首をひっかき始めた。
「いやそんなことは無いけど、でも」「ならしてよ、早く。
・・・大丈夫だよ、外国でもキスとか普通にしてるでしょ?そういうものだと思って、ね?」
冷たさを前面に出した声で言葉を断ち切ったかと思うと、次の瞬間には優しく安心させるような笑みで俺の事をなだめる。
感情の変化についていけないまま、光の言葉を断片的に理解した俺はゆっくりと顔を近づけて行った。
「ん・・・ね?全然普通だったでしょ?これも段々慣れて行けばいいよ、僕も頑張るね」
「これからもするのか?」
「うん、だって僕はいつだって太一兄さんの事が大事だし、太一兄さんも僕の事が大事でしょ?今、キスしてくれたよね?そう言う事だよね?」
そういう、事なのか?
俺は・・・した。キスをした。
何で?
光が大事だから。
何で?
だって光は、俺の事を大事だって言ってくれたし、キスもしたし・・・キス?俺もした。
なら俺も光が大事で、光は俺が大事で、だからキスをして「ふぅん、返事してくれないんだ」
考えがまとまらずに同じことを何度も考えていると、先ほどよりも更に冷たさを増した光の声が聞こえた。
「僕の愛情表現が足りないんだね、分かったよ。なら分かるまでしてあげるね」
光はそう呟くと、啄むように俺の唇にキスを落とし始めた
「ん、ん、後何回?ん、ほら、ん、こんなに大事なんだよ?ん、ん、まだ分かんないの?」
光の行動が、言葉の意味が、分からなくなってきた。
俺は一体何をされてるんだろう、光は一体何をしてるんだろう。
「光」
「ん、ふぅ、やっとわかってくれたの?太一兄さん」
『兄さん』と言う言葉に、俺の中の常識が違和感を感じた。
やっぱり普通じゃない。
光とは厳密には兄弟じゃないけど、それでもこれはおかしい。
「光の事は大事だけど、でもキスはしない」
嬉しそうだった光の顔から、表情が抜け落ちた。
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