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「ねぇ、僕思ったんだけどさ。太一兄さん嫌々やってない?」
光の突然の雰囲気の変化に頭が付いていかない。
「何で、急にそんな事言うんだ」
「だってキスも出来ないし、これだって僕が言ったことしかしないし・・・やっぱり嫌なんだ」
光の目が俺をとらえるが、そこに今までのような温かみは無い。
何で。何で急に・・・上手くないから?何も出来ないから?
「あーあ、僕は太一・・・君の事結構好きだったのになぁ、いーよ出来ないんなら無理しなくても」
正体が分からない不安が、身体の中心から温度を下げていく。
「光、俺は」「あ、ならここに居てもらう必要も無いよね?僕の兄さんで居るの嫌なんだもんね?僕の事が嫌いだから、僕に、好かれるのだって、ぜーったい、嫌、だよね?出て行きたいんだよね?」
最早身体は冷え切っているのに、何故か全身を覆うように汗が噴き出る。
光の言葉は止まらず、むしろ勢いと鋭さを増していく。
「あー、そういえばさっき晩ご飯食べてる時も嫌そうだったよね?僕が折角教えてあげるって言うのに嫌がったよね?やっぱり僕の事嫌いだったんだ。ごめんね?気付かなくて。ははっ、馬鹿みたいだ。勝手に一人で盛り上がってさ、太一君と一緒に寝るだけ嬉しかったのに。キスしてくれた時凄く幸せな気分だったのに。僕だけだったんだね。太一君は嫌だったんだよね?ずーーーっと僕の事が嫌いだったけど我慢してたんだよね?僕から早く離れたいんだよね?ここに居たくないんだよね?またあそこに戻りたいんだよね?毎日毎日あの人に犯されたいんだよね?またもとの生活に戻りたいんだよね?ごめんね気付かなくって。じゃあさっさと呼ぼうかあの人達。大丈夫だよ安心して、すぐに連れて行ってもらえるだろうから。すぐに元の生活に戻れるから。毎日犯されて。殴られて。一人で寝て、犯されて、起きて、犯されて、殴られて、ご飯作って、犯されて、犯されて、殴られて、犯されて。あ、ごめんね。早く呼ばないとね」
光が携帯電話の操作をし始めたのを見た時、冷えていた身体が急速に熱くなるのを感じた。
気が付くとしがみつくように光の手を握っていて、携帯に『父親』の二文字が見えた瞬間俺は必死で謝っていた。
「練習するから、ちゃんと練習するから、練習するから」
何を言えば良いのかも分からない程に、俺は混乱していた。
光は無理に体制を整えようとせず、逆に掴んでいた片手で俺の耳を触りながら告げる。
「練習するから何?早く呼んでほしい?それともここに居たい?」
与えられた選択肢に、いとも簡単に縋る。
「ここに、居たい」
「何で?」
何で?何で?何で何で何で「僕の傍に入れないのが嫌?」
「嫌だ」
「ちゃんと言って」
「光の、傍に入れないのが嫌だ」
「本当に?」
「本当に」
へぇそう。
そう言ったきり、光は黙りこくって俺の目をじっと見つめて来た。
沈黙が更に俺の鼓動を速める。
「・・・じゃあさ、全部太一君からやってよ。キスも、フェラも。合図だけはしてあげる。目をつぶったらキス。太一君って呼んだらフェラ。下手でも良いよ。出来るならここに居ても良い」
「出来る」
キスも、フェラも愛情表現だと言われていた。
だが、光はそれを交換条件のように示した。
つまりは強要。
行為が持つ意味が変わりつつあること。
元の生活に戻る事に対する異常な不安。
光の急激な雰囲気の変化。
考えれば、考えるほど分からない事ばかり。
光の言葉が暖かく、それらの疑問を覆い隠した。
「・・・分かったよ。ごめんね怒って。僕、ちょっと不安になっちゃって。本当にごめんね。酷いこと言って。ごめんね」
腕を取って俺をベットに引き上げ、今度は光が俺にしがみつくように抱き着いた。
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