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まどろっこしい手紙(2)
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「ラブレター!?」
正体を見破るや否や、面白いくらい食いついた。
そうそうこれこれ! この反応だよ!
「ラ、ラブレターだよー! 靴箱に入ってた」と、おれもテンションが高い佐倉に乗っかる。
「読まして読まして」って勉強中にしか掛けない眼鏡を引っ張り出す佐倉に無言で十回くらい頷くと、小さな声で読み始めた。
「……か。今日の放課後裏庭で待っています……あれ、名前ないんだ」
「あーウン。
まあ会えばわかるかなって」
「そだな。
それより気になったんだけど、この『裏庭』ってどこのこと?」
「うらに…『裏庭』?
校庭かと思ってた」
手紙を傾けた佐倉の手を掴んで、見やすい位置まで引き上げる。
ほんとだ、『裏庭で待っています』。
「体育館裏、とか?」
裏庭といえばそんなところしか思いつかない。
パッと頭に浮かんだ可能性を挙げると、「いや、」と佐倉は否定した。
「あそこそんな広くないじゃん。
庭っていうくらいだから、やっぱり中庭じゃないの」
「『中庭』と『裏庭』、書き間違うかなあ?」
裏庭がどこかわかんないけど、中庭は文字通り校舎で囲った真ん中にある庭のことだ。
それなりに広いけど、死角がない。
死角がないから、告発に選ばれるようなスポットじゃない。
…ん? 告発? じゃないや告白。やりなおし。告白ね。
公開告白みたいになるから、おれだったら絶対にやだ。
「でも中庭に『裏』とかないだろ?」
むむむ、と佐倉は眉間にシワを寄せる。
「な、なあ、これ場所わかんなくて行けなかったら、おれ断ったみたいなことになんのかなあ!」
「どーしよおお!!」って佐倉の肩を揺さぶりながら喚けば、頭が面白いくらいがっくんがっくん上下に動いた。こういう人形でちっちゃい頃遊んだなあとなんだか急に懐かしくなる。
そういう場合じゃないしおれはラブレターのことでもちろん悩んでるんだけど、違うこと考えながらこれまた違うことを同時に考えちゃうのは悪いクセだなあ。
「ちょっ鈴木、目、目回るから」
「佐倉ー佐倉ー!
せっかくラブレターもらったのにー!!」
「こ、今度は首入ってる首」
我を忘れてた。
ごほごほせき込む佐倉を「ごめん」って開放して、ラブレターをじっと見つめる。
隣でうんちゃらかんちゃら言ってるのは無視した。
参ったなあ、なんかアドレスとか…番号とか…ないよな?
光に透かして見たりするけど、そんなものはやっぱり無い。
……もしかして火にあぶると文字が出てくるっていうアレだったりすんのかな。
ハア、って肩を落とした瞬間、不意にパッと手紙が手から消えてしまった。
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