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一難去って…… 6 side茜
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シャツを着替えた真音が再び俺たちと対峙する。身体については何も聞かなかった。聞いたらいろいろと面倒になりそうだし。聞かれたくないだろうし。
「翡翠さんは、おそらくもとの生活には戻れないでしょう。彼の兄たちの行方は知りませんけど」
「戻れないって……」
自殺するでしょうね。と何の躊躇いも無く真音が言った。ちょっと待て、自殺……?
「翡翠さんは心の弱い人間です。聞かないようにはしているんですが、翡翠さんの部屋に彼の兄が訪ねてきた次の日は泣いてますから」
「……何で知ってるんだ?」
「泣きながら、担当医に相談しているのを知っているので」
翡翠さんの担当医は僕の担当医でもあるので。と補足した真音。個人情報とかそういうのは完全に無視している。
「翡翠さんの脚、彼の兄たちによって、一度立てなくなるほど腱を切られていたんです。僕はその手術後、リハビリをしている時に翡翠さんと知り合いました」
「今回も、切られてた」
「手当は?」
「お袋が」
「それなら良いです」
一度途切れた話題を、俺は再び振る。
「何で、自殺するって言い切れるんだよ」
「翡翠さん、茜さんに見られたって気づいたら、平穏でいられると思いますか?」
「どんな翡翠さんでも、俺は受け止める」
「あの状態の翡翠さんは、彼の兄たちに作り上げられた“抱き人形”です。そして作られた人格まで備えてある」
顔色一つ変えず、真音は生々しい事実を口にする。なぜ、そこまで言えるのか、俺には不思議だった。
「作りあげられたとは言え、翡翠さんは翡翠さんです。後悔は必ず来る」
「…………そうだよ」
眠っていると思った翡翠さんが、真音の言葉を肯定した。
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