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たった一つ
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圭太 Side
あぁもう……ほんとムカつく
顔を真っ赤にさせた怜司が出ていったドアを見ながら再びソファーに倒れ込んだ。
腕で視界を閉ざすだけで、怜司の顔が鮮明に浮かぶ。
あのバカ猿は本当にいともたやすく俺の心をかき乱して全部を持って行く。
あの日、ずっと押し込めて鍵を閉めて封印していた感情が出てきてしまって…
触れるたびにすごく満たされた気持ちになった。全部忘れて目の前の熱に夢中になって、想いが全部伝わればいいと、どれだけお前に心を奪われているのかと全身で訴えた。
なのに最後…「どけ」と言ったあの顔で一気に冷めた。やらかしたんだと後悔した。
けど翌日話題になっていたのは怜司に彼女ができたという事。
誤解だったのじゃないかと問い詰めたら目を逸らされて、逃げられて…
家に行ったら行ったであいつの母親から怜司の彼女はどんな子だと聞かれて、あぁ…嘘だと言ったのが嘘だったのだと思い知らされた。
わかっていた…男同士。それはすごく高い壁だという事。
世間では少しずつ理解され、同性婚なんてのも認められている。そうはいっても普通とは違う。あいつは女が好きで彼女まで作ってしまった。
どうでもよくなって、空っぽになって、家に帰る気になれなくてフラフラと外を歩き回った。
学校に行っても徹底して怜司を避けた。
どんな顔をすればいいのかわからなかったから。でもどうしても何事もなかったようには振る舞えなかった。
何度か女に誘われたけど、たった一度、あのわずかな時間を思うとどうしても他の奴と身体を重ねる気にならなかった。
他はいらない。
欲しいのは一つだけ。
けどそれが手に入らなくて、気を紛らわすために家に帰ってもすぐに外に出た。
家には怜司がいた跡が多過ぎるから。
そしたら案の定群れができてうっとおしくてたまんないけど、そのうっとおしさが逆に気を紛らわしてくれた。
それなのに、あいつは俺の前に来て、女の群れに若干怯えてるくせに俺の手をしっかりつかんで引っ張り出した。
それがどれだけ嬉しかったか、怜司は気付いていないだろう。しかも最後には自分に引っ付いておけって…
そんなこと言われたらそうするしかねぇじゃねぇか…
あぁこれだから好きなんだって…
俺にビビってるくせに、絶対に逃げない。
逃げたとしても、あれだ。ちょっと距離を置いては「追いかけてくる?追いかけてくるよね?」って誘ってるみたいに振り返って待ってる。俺が離れようとすれば追いかけくる。
ほんとムカつく。俺が主導権握ってるようで、実はがっつり翻弄されてるのが、本当にムカつく。
でもそれが嫌じゃないから本当に…
めんどうだ
圭太 Side END
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