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おすそわけ
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「怜司、これ作ったから圭太くんにおすそ分けしてきて~」
夕方、リビングでテレビを見ていたら、やけに上機嫌な母さんの声が聞こえてきた。
重い腰を上げて、キッチンに向かうと、朝から張り切って料理を作っていた理由がわかった。
これ、おすそ分けレベルじゃない…
明らか圭太のために作ったとわかるタッパーの量と中身に思わず眉をしかめた。
「なにかあったの?」
「ほら、この間圭太くんが来たとき様子が変だったでしょう?
それで、やっと今日早く仕事が終わったし、圭太くんの好物でも作ろうと思って~」
まるで一緒に居たでしょう?と言わんばかりの口ぶりにいつの事かと頭がフリーズしたが、そういえば風呂に入ってた時に来たんだっけと記憶を照らし合わせた。
そして道理でタッパーの中身が圭太の好物で埋め尽くされているわけだと納得した。
のんびりとタッパーを蓋して紙袋に詰めていく母さんの後姿を眺める。
本人はきっと慌ただしく動いてるつもりなのだろう。それが余計な動作から見て取れる。
見てわかるはずのタッパーの蓋の大きさを間違えて用意したり、いくつもタッパーがあるのだから一度にとって来ればいい蓋を一枚一枚取りに動くし、コンロの前に行ったと思ったら首をかしげて戻って来たり(きっと用はなかったのか、用を忘れたのか)…
全部袋に詰めて俺を呼べばいいのに、料理を作り終わって一段落して何も考えずに呼んだんだろうな
このおっちょこちょいでのほほんとした母さんが、どうやって仕事をこなしているのかといつも不思議に思う。
けどいつだったか、職場ではバリバリのキャリアウーマンだと聞いたことがあるが、家ではその面影は微塵も感じられない。
けど、どんなに帰りが遅くなっても家に仕事を持ち帰ったことがない事を考えると、職場ではしっかりしているんだろう。
家での母さんが悪いとは思わないが、もう少ししっかりしないと押し売りとか詐欺に目をつけられるんじゃないかとちょっと心配になる。
やっとタッパーを全部詰め終えた紙袋を受け取り、玄関に向かう。
わざわざ玄関先まで見送りに来た母さんは「今度は家に食べに来てねってちゃんと伝えるのよ?」と何度も俺に念を押してきた。
はいはいと適当に返事をして圭太のマンションに向かう。
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