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好きを見せて。10
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信じられないっ…!
俺、あの人に利用されてただけだったのかよ
それなのにはしゃいで馬鹿みたいに喜んで…
っ…なにが、なにが…
「なにが…恋人なんだよ」
「おい」
「っ!あ…」
教室に戻るわけでもなく空き教室に向かおうとする途中我慢していた涙が少しずつ頬を伝う
「なに、泣いてんだよお前」
「な、泣いてなんか!」
後ろから掛けられた声は日向心咲のものでいつもとは違い心配したような声色の心咲に強がってみせようとするも涙は止まらなかった
「…強がるなよ」
「ッッ!どうしよ、俺…センセぇ俺!どうしたらいいのか分かんなっ…ぅぐ、ふ」
突然泣きじゃくる啓に心咲は胸を貸してやりながら慌てて背中を擦る
「屋上に行くつもりだったんだけど一緒に行くか?」
「いぃ、のかよ…」
「声かけちまったんだ、しようがないだろ?ほら立てるか」
「ぅん…」
「言っとくけど一時間だけだからな」
そんなことを言いながら優しく対応する心咲に酷く安堵した
**
「阿久津先生はズルい人だということがおおいに分かりました」
「そうでしょ」
「どうしてあんなことを?」
「思ってるまんまですよ、心なんて有って無かったようなもんなんです」
「でも、痛いんじゃないですか?」
「そうですね…初めてビンタされたし」
「そこじゃないですよ」
「え」
笑いながら頬を擦る臨海は幸村の言葉に手を止める
「他にあるんじゃないですか?痛い場所…」
「幸村先生って意外と毒舌?それともただの天然なのかな…」
「…すみません、そんなつもりじゃなかったんですけど…」
「いいですよ別に…それと他に痛い場所なんてないですよ」
「阿久津先生…」
「はい」
「…いえ、何でもないです。仕事があるのでこれで失礼します」
「お疲れ様です…頑張って下さいね」
「ありがとうございます」
一瞬だけ眉間にシワを寄せると幸村は一礼して生徒指導室を出ていく
「痛い場所、ねぇ…」
――――――…屋上
「やっぱ屋上はいいなぁ」
「そっすね」
「…あんま深くは聞かねぇけど話せることなら聞くぜ?」
「その…」
「ん?」
屋上に着くと背伸びをする心咲に暗い気持ちでコンクリートの床を見る
「ずっと好きな人がいたんだけど、最近付き合えるようになったんだよ」
「良かったじゃねぇか」
「そりゃ好きな人と両思いなんて最初はスゲェ嬉しくて喜んだよ…けど」
「…」
「騙されてたんだ、そいつは全く俺のこと好きじゃなかった…俺のこと利用してただけだったんだ」
「…」
「俺、大好きだったからすごくショックで…」
ポツポツと流れ落ちる涙を見る心咲は啓の肩を抱き寄せる
「お前は悪くないよ、大丈夫だから」
「うっく…」
「話してくれてあんがと」
心咲の不器用な優しさに啓は泣き疲れるまで心咲の腕の中で涙を流し続けた
ガチャン
「あれ、心咲さん」
「類!」
「何してんの?こんなところで…」
授業終了のチャイムが鳴る少し前に突然屋上の扉が開き誰かと思えば類だった
心咲に気付き明るく話しかける類に人差し指を口に当て静かに、とジェスチャーで伝える
「あー」
またもやジェスチャーで心咲は己の膝を指差す
類は漸く心咲の膝の上に頭を置き眠る啓を見つけ成る程と言うような顔で心咲がジェスチャーで伝えようとしていたことを理解する
「何があったんだよ、コイツ」
「んーちょっとな」
心咲の隣に座ると小声で話しかける
「お前、緒方の“好きな人”って知ってるか?」
「なにそれ、知ってるけどそれが?」
「なんか、両思いになれたのに実は相手から騙されてたらしんだ…好きじゃなかったとか利用されてた、とか」
眉間にシワを寄せながら一人言のように呟く心咲に類は黙り混む
「なぁ緒方の好きなやつ知ってんなら話してみてくれないか?」
「無駄だと思うよソレ」
「なんで…」
「…一筋縄じゃいかない様な人だから」
「そんなやつ居たかな…」
「心咲さんのよく知ってる人だよ…っても俺は嫌いだけど」
訳が分からないと頭の上にいくつものクエスチョンマークを浮かばせる心咲に不意打ちでキスをする
「ま、アンタの頼みなら一肌脱いでやるか」
「コイツのためにやってやれよ素直じゃねーの」
「っ…んじゃ俺行くわ」
「あぁ」
ヒラヒラと手を振りながら扉に消えていく類に肩から力を抜いた
「よく寝てるな…」
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