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恋のハプニング?!(1)
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「やーっと、着いたー!」
大声を張り上げたのは、クタクタの沖。
そして、松野くん家に到着。
一戸建ての一軒家は、そりゃあもう立派。
…で、けぇ。
マジマジとその大きい一軒家を見詰める。
お洒落な一軒家だなぁ。
ぽつーんと突っ立って、ボケーっと只、その大きな家を見上げたまま、俺の周りって金持ちばっかじゃね?って少し、考える。
「はらへったよー、マッツぅー」
「はいはい、荷物置いたら、直ぐに準備するから」
沖はまるで我が家の様に遠慮なく、づかづかと、玄関を開けて入って行く。フジもあんまし気にした素振りはない。そーいや、沖は松野くんと幼馴染だし、フジは金持ちのボンボンだから、そんなに驚かねーのかな?
「ほら、波嶋も気にしないで上がって?」
松野くんが、阿呆面で立ち尽くしてる俺に声を掛ける。にこやかな笑顔に、なんでかあの時の言葉を思い出して、どき、っとする。
「…あ、う、うん。お邪魔します…」
とぎまぎとしてしまって、少し、慌てながら玄関へと入る。すると、玄関を入ってからまだびっくり。あんぐり。玄関もスゲー大きくて広い。…てか、この床の石、大理石ってヤツ?ピカピカしてて、眩しったらない。
俺の足は再び止まる。
目の前に続く綺麗な長い廊下に、足を進めるには何だか忍びなく思えてしまう。
(……お、落ち着かない)
友達の家にお泊まりに来てる筈なのに、なンだろ?そんな気になれないンだけど…?場違いっつーか、ホントにここに泊まりに来て良かったのか…?
ビクビクしてる情けない俺なんて御構い無しに、バカ沖とアホフジはドカドカ家に入って行く。…俺だけ置いてけぼりデスカ。
「波嶋…?大丈夫?」
そんな俺を心配したのか、松野くんは心配そうに立ち止まり、振り返る。何か具合が悪いと思ってくれているのか、待っててくれた。
「あ、へ、平気…!ちょっと眠くて…」
はははっと乾いた笑を浮かべて、誤魔化す。
ビビってますなんて、そんな情けない事は口が裂けても言えない。俺は、恐る恐ると足を踏み入れる。そんな俺を不思議そうに見ている松野くんの視線が何だか痛い。
そんで、余計にぷるぷるしちゃう俺って、チョーカッコ悪くね?
「俺んち意外に遠いいもんね。疲れちゃったのかな」
長い廊下を歩きながら松野くんが笑かける。さり気なく気を遣ってくれるその素振りは、本当に大人っぽくて紳士的。
こういう風に接してくれるダチとか、俺には居ないし、そもそも俺の周りって言ったら下品で馬鹿なヤツらばっかだし?…慣れないってか、どう反応?すべきなのかとか…。
みればみる程、あの完璧でモテ男のフジとお似合いなんじゃね?なんて、弱気になってる俺がいて。……スゲー、つか余計に縮こまってしまう。ホント、俺らしくない。
『協力してくれない?』
松野くんの笑顔を見るたび、思い出す、声。
それが、胸に一々引っ掛かって俺の足を進めなくさせる。
「散らかってるけど、ゆっくりしてて」
リビングルームに通されると、松野くんがサッとソファーに案内してくれた。
そのリビングは散らかってるどころか、チリ一つ落ちてないくらいに、これまたピカピカ。
俺ンちのリビングなんて比にならない程、てか体育館みたいに広い。そして目の前にはスクリーンのごとく、何インチか分からんどでかいTV。
「…あ、サンキュー……」
ソファーにおずおずと座る。
そんなソファーも座るなんて恐れ多いくらいに高そーな、貴族が使ってそうなオシャレなデザイン。そんでもって、座った瞬間、フカフカしててスゲー感動。トランポリンての?それみたいに、弾力が半端ない。
バフバフしてしまいそうになるのを、我慢。
…ンな事して、万が一壊したらってのが頭を過ってなに一つゆったりと寛げない。カチコチの身体のまま、大人しく待機。
「もぉー動けなーい!腹減ったよー」
すると、荷物を置きに行っていたのか、戻ってきた沖が力無く歩いてきた。そして、ソファーの真ん中にちょこん、と座る俺の右隣に沖が、大きくバフっと座る。フカフカのソファーが揺れ、そんな態度の大きい沖の様子にぎょっと俺は、ガン見。
「何か出前とるー?」
リビングの方から松野くんの声がする。
沖はダラダラとだらしなくソファーにふんぞり返りながら、んーっと生半可な返事をする。
(…幾ら幼馴染ンちったって、寛ぎ過ぎだろ)
コイツって、やっぱ大物?なんてくだらない事を考えながら、沖を尊敬っての?いや、ンな大層なモノじゃないケド、悪く言えば神経図太いヤツだなぁなんて眼差しを向ける。
その時、パチ、っと沖と視線がぶつかった。
必然的に沖が俺を見上げる様な形で、上目遣いで俺を見詰める。
「なぁに?ゆーきちゃん…?」
ニヤっと笑うコイツは何がそんなに嬉しいンだか、気持ちの悪い口調で俺に話しかけて来た。
「……気色悪いからヤメロ、沖チャンよぉ」
顔を近付けてくる沖の顔を右手で押し退ける。こんな事されてるのに、沖は、やーん、ツンデレー♪…なんて、喜んでいる。……正直、ゾッとした。
つーかやっぱりコイツって、Mなの?マゾなの??マゾって今年の流行りなワケ???
今は冷たくされてるだけで満足してるっぽいケドさ。そのうち、罵ってとか叩いてなんて言われた日には、俺どーすりゃ良いのか、わかンないンだけど。
「…でもさ、強がってるのも可愛いけど、たまにはデレてくれるといいのに」
考え混んでいると、ふと耳元で吐息を感じた。あまりの近さに、沖の方を向く。
低く囁かれた声は、とても甘く鼓膜に響いて、俺の顔に熱が篭る。
沖の瞳が、真っ直ぐに俺を見る。
何時ものあの、ヘラヘラ笑う子供っぽい沖じゃなくて、腹を空かせた獣の様な獲物を喰らう瞳。
「お、き…っ」
息の詰まりそうな、この瞬間。
さっきまで、隣りにはあの、バカで阿呆っぽい人畜無害な沖がいた筈なのに。俺の隣にいるヤツは誰だ…?
ぺろっと口から覗く赤い舌。
舌なめずりをする沖は、ギラギラと瞳をギラつかせて、只、俺を見る。
俺へと伸びる沖の手が、ゆっくりとまるで俺を捕らえて喰ってしまうかのように。慎重に、けれど、逃がさない様に確実にと、俺に向かってくる。
「…ま、待てよ、沖…っ」
俺の声なんて聴こえないふりなのか本当に聴こえてないのか。近付く手と顔。俺は何故だか身体が動かない…いや、動けない。
何考えてンだよ?!
ここ、松野くんちなんだけどっ??!
人様ンちで、ナニ考えてンだよっ…!
心では叫んでるのに。なんでか、声が、出ない。上ずった情けない声しか出ないんだ。そんで唇だけが、辛うじて動くだけ。
ハクハクとまるで金魚の様に、唇だけを動かす。目の前にはいや、数ミリの距離で沖の、顔。まるで、喰らうように口を半開きにし、俺の唇に触れてしまいそう。
(もう、ダメだ…っ!!)
固く目を瞑る。
その時、ぐわん、と物凄い力で身体が引張られ、誰かに引き寄せられた。
な、何事?!
ぱっと目を開き、辺りを見渡そうとしたが、大きな掌にその視界を遮られた。
そして次の瞬間、身体がポフっと何処かに収まる感覚がした。その感覚は、俺がよく知っている、あの安心する感覚だった。強く抱きしめられた腕が、しっかりとホールドしていて、俺は身動きが取れずに少々混乱。
「…テメェ」
静かに俺の耳元でドスの効いた声が聴こえてきた。
その声に、何だか、サーッと血の気が引いたのはナイショ。…いや、別に怖かったとかじゃないからね?
「文句ある…?だって、まだゆーきはアンタのだってワケじゃないんでしょ?」
暗闇の視界で沖の声が刺々しく、耳に刺さる。その空気に緊張で、ゴクッと俺の喉は上下する。
息が詰まるぅ…!!!なンなの?この空気…!!威圧感、ハンパないンだけどっ!!
無言の威圧感が、俺を押し潰すかのように、降り注ぐ。
二人の沈黙が重くて、俺はやっぱり窒息死。…なんで、こうなるンだよ?!!
この後、松野くんが飲み物を運んでくるまでの5分間。俺にとっては、まるで1時間の様に感じられた。
……松野くんちのお泊り、先行きが不安でたまりません。
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