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こいつは俺のだから
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side フジ
「……おっそい」
一時間目が終わった。
遅い、遅すぎる。
…寝坊?メールしても返ってこねぇし。
なんだよ、昨日のことで怒ってんの?
…だってさ、そろそろ俺のこと意識してほしいじゃん。お前バカだし、鈍感だから。
俺の前の席は空席。
休み時間は馬鹿みたいに騒ぐ奴がいなくて、静かだ。
(…家の方に電話すっかな。美羽さんいるかも)
はあっと溜息を吐き出す。
美羽さんてのは、ゆーきの母さん。イギリス人のハーフらしく、めっちゃくちゃ美人。
…あいつ、クォーターらしいけど。肌が白いのもなんか納得。
ぼーっと窓辺から空を見上げる。
ちらっと屋上に人が見えた。
…?なに、揉めてんの?…痴話喧嘩…ってか此処男子校…。
「…家でやれっての」
すると、フェンスに人が叩きつけられている。
…おいおい、やめとけって。痛そうだな。
小さい方の男子生徒は、無茶苦茶暴れている。大きい男子生徒に無理矢理押し付けられる形で。
暫くその様子を見詰める。
…?なんだ、この違和感。
……おい、待てよ。
まさか。そんなワケ………っ。
「…ゆうき…?」
遠くからだから、よく顔なんてわかる筈ない。けど、なんだ。なんだか分からないけど、遠くからでも、分かる。間違いない。
ふざけんな、なんで。なんで。
ぶあっつと嫌な汗が吹く。嫌な予感、俺の予感は当たるから、こんなとき嫌だ。
大きな男子生徒が小さい男子生徒と重なる。
「!!!っ…」
俺は気が付くと立ち上がり、廊下を走ってた。全力疾走。速く、速くいかないと…!
階段は、なんでこんなに長いんだ。
息が上がって苦しいのなんの。…けどさ、それ以上に、胸が苦しいっ。触るな、あいつに触るなよっ!!
屋上のドアを勢いよく開けた。
「ゆうき…っ!!」
切迫詰まった俺の声が響く。
情けないほど、手が震えた。
…目の前の光景に。
「や、…っ…やめろ…っん」
聴こえる声は俺のよく知ってる声なのに、鳴き声と少し甘い喘ぎ。
「…なんで?こんなに可愛いのに…?」
俺とよく似た声は欲情した目で、ゆうきを見詰める。フェンスに押し付けては、何度もゆうきの唇にキスを落とす。
「…ひゃ…ふ…っん、」
涙を目に一杯溜め、嫌だと首をぶんぶんと降る。
しかし、力が入らないのか恐怖からなのか、ガタガタと小刻みに震えては、されるがままキスを落とされている。
ゆうきの赤い舌がてらてらと光り、その舌をあいつの舌が、絡む。
ゆうきは、俺の存在に気がついていなかった。けれど、あいつはチラッと俺を横目で盗みみては見せ付ける様にゆうきと唇を重ねる。
俺はその光景を唖然と見詰める。
…あそこで泣いてんのは、誰?
ゆうき、だろ?……なに、やってんだよ…。
頭がグチャグチャで、何も、考えられない。真っ白に染まる、思考。
「…ゆうき先輩の唇、甘いね?もっと、頂戴?」
ぺろっと舌なめずりをし、荒い息を吐き出すあいつ。
「……やだっ、………っも、むりっ…、ふじぃ…っ」
ひくひくと細い肩を震わせ、ゆうきは悲願する。か細い声で俺の名を呼ぶ。
「…ひっ、く…、ふじ、ふじぃ…」
白い頬を涙が流れ、落ちる。
その声に、俺ははっとした。
「ゆうきっ…!!」
何やってんだは、俺の方だろうがっ!
やめろ、触るなそれ以上。
そいつに触れるのは、触っていいのは、おれだけだっ。
「…、こいつは、俺のものだっ!」
思いっきり、渾身の力を込めて、あいつの顔をぶん殴る。じんじん熱が帯びる、拳。触るんじゃねぇよ、泣かせるな。
どんなに、俺に似てても嫌なモンは嫌なんだよっ。
ゆうきの肩を抱き、ぐいっと引き寄せる。
きつく、きつく肩を抱きしめる。
ガタガタと震えるその細い肩をきつく。
あいつはヨロっとふらつき、にやりと笑う。許さない、その挑発的な眼差しも、ふざけた考えも全部。
「……こいつにゆうきに手を出したこと、今から後悔すれ」
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