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心、通う
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遠くで、携帯が鳴ってる音がした。
…うるせぇ。まだ、寝たりねぇし。何時だよ…、ん?何時だ??
ばっと勢いよく起き上がる。
俺、何時の間に寝てたンだ!?
「何時まで寝てる気だよ、バーカ」
直ぐ近くで、聞き慣れた声が聴こえた。
そいつはホントに呆れた顔で、頬杖を付いていた。
「…起こせよ」
乱れた髪を手で梳かす。
むすっとした声で零す。
…何だよ、一人にしろって言ったじゃん。
「きっちり、放課後まで待った」
フジは、俺の心の声を読んだかの様に、話す。…知ってるよ、ンなこと。お前は昔っから約束だけは、きっちり守る奴だから。
律儀で、世話焼きで気が合って。
頼りになるし、付き合いいいし。隣に居るのは居心地がいいんだ。…意地は悪いけど、本当にいい奴。
そうだ、フジは悪くない。
俺のこと心配して、来てくれたことはわかってる。…だけどさ、なんでだろ。素直になれない、俺は。喜べない。
「…俺のこと、別に待ってなくて良かったのに」
最低だな、ホント。
こんなこと、言いたくないのに。
八つ当たりだろ、こんなの。
…酷い言葉を、言ってしまいそうだ。
「ゆうき」
やめろ、見るな。
こんなの、俺じゃない。
落ち込んでなんか、ない。傷付いてなんか、ないんだよ。この程度で、イジけてるなんて、ホントカッコわりぃ。
フジから逃げる、見られたくない。
クソダサい顔なんか、お前に一番見られたくない。…だってさ、弱いとこ見られるなんて、凄くカッコ悪いじゃん?お前どうせ、笑うじゃねぇか。
「…ゆうき!」
フジはしつこく、俺を追い回す。
大概にしとけよ、お前。
イヤなんだよ、しつこいヤツはモテねぇンだぜ?
「っ……やだって…!」
両腕を捕まえられる。
きつく掴まれたその手が、こわい。
隠さなきゃ、イヤだ。見るなよ。
腕を振り払おうとするけど、ふりほどけない。強く、強く掴まれて離れられない。
顔を背ける。深く、俯く。…くそっ、やだ…見るな、……もう、泣きそうだ。
目頭が熱を帯び、じぃんと奥が焼けるように、熱い。流れ落ちてしまいそうなその泪を、必死に抑える。
「大丈夫だから」
優しい声と一緒に、フジの体温を感じた。
合わせるように、額を重ね、フジは目蓋を強く閉じていた。
強く掴まれた腕は、きつく。
重ねられた額は、まるで抱き締められているかのように。フジの、体温が、熱が、鼓動が伝わる。
それに安心して気が緩んだ。
揺らぐ視界は泪で霞む。
…優しくすンな、バカ。涙腺が緩むンだよ。
ホントカッコ悪い。なんだって俺は、お前に気ィなんて簡単に、許しちゃうかな。
如何してお前は、糸も容易く俺の心に入り込むンだろ。
卑怯だ、気に食わない。俺ばっか負けてるみたいで。
…だけどさ。
そうなのに、それなのに。
もっと、欲しくなる。負けるのは悔しいのに。
「…抱きしめろよ、バカ…」
手を伸ばしてるのは、俺のほう。
欲しがりで、欲張りになったのは何時から?
フジは一瞬、驚いた表情をしたけど、直ぐに嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
…おい。ホントに卑怯だ。なんだよ、反則だろそれ。なんでそんな嬉しそうに笑うンだよ。ワケわかんね。
そんなこと考えてたら、直ぐフジの大きな体温に包まれて居た。フジの匂いが、鼻を掠める。心が満たされてゆく。こんなに、こんなにも。安堵出来る、落ち着ける。
フジが一生懸命、俺を抱き締めるもんだから、不覚にも笑ってしまった。
フジが照れたように笑うなと怒った。
そして、二人してまた笑いあった。
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