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わからないよ
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尚兄ちゃんの、あの驚いた表情。
あっさりと、よろめく身体。
…悲しげな瞳。
なんで、俺は突き飛ばしたんだろ。
ぐるぐると思考がワケわかんなくなって、パニくって。
「……おれ、っ」
好きなのに。
大好きなのに。
嫌われたくないのに、離れたくなんてないのに。俺が悪いコだから?俺がきちんと言うこと守らないから?
「ごめ…っ」
縋る思いで尚兄ちゃんに視線を向ける。
尚兄ちゃんは、哀しそうに笑っていた。
「ゆうきが思う『好き』と俺の思う『好き』は、同じなんかじゃ、ない」
分かっていた、そんな表情をされた。
尚兄ちゃんは、最初から分かっていたんだ。
「お前は、『好き』と『尊敬』を履き違えてるんだよ」
尚兄ちゃんに突き付けられた気がした。
その言葉を言っている尚兄ちゃんは本当に哀しそうで、…胸が痛んだ。
「やっぱ、俺じゃ無理か…」
尚兄ちゃんは、ははっと乾いた笑を零す。
何も言えない俺は、只申し訳ない気持ちとなんで?って気持ちで一杯だった。
「ほら、ゆうき。鹿目ン処、早く行って来いよ。待ってるんだろ、あいつ」
軽く背中を押される。
にっと笑うその顔は何時もの、あの大好きな笑顔で、泪が溢れそうになる。
何時からだろう。
大好きだった筈の尚兄ちゃんよりも、あいつの事ばかり考えてしまうようになったのは。
自分でも如何してなのか、わからないんだ。
「…尚兄ちゃん、俺…」
『ごめんなさい』その言葉を呑み込む。
貴方と同じ『好き』になれなくて。結局、俺は貴方を傷付けてしまって。
尚兄ちゃんが、俺を求めてくれたのに。
…俺は貴方を選べない。
分かってしまった。
気付いてしまったんだ。
何時の間にか、あいつが、フジが。
俺の『特別』になってしまったことに。
…知らないフリ分からないフリ。
そんなことをしても、尚兄ちゃんは全部わかっていたんだ。
「なんて、顔してんだよ。似合ねーぞ、馬鹿」
笑う顔。…それはこっちの台詞だよ。あんたこそ、なんて顔してんだよ。無理して笑うなんて、馬鹿はあんただよ。
「ありがとう」
目一杯の笑顔で、言う。
ごめんなさいの代わりに。
「おう」
尚兄ちゃんの笑顔を背に、走り出す。
振り返らない。…なんで、俺はこの人じゃ駄目なんだろって。如何してフジなんだろうって。わからなくて、…知りたくて。
俺は、ひたすら、走ったんだ。
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