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12 来訪者
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「ゆうと、おはよ~さん」
「タカさんおはようございます」
時刻は朝、9時10分。
いつもなら10時の朝礼ギリギリにしか出勤して来ないタカさんが、こんな時間にお店にいるなんて、本当に珍しい。
「タカさん、こんな朝早くにどうしたんすか?今日、雪でも降ります?」
「うるさいよ」
ロッカーに荷物を詰め込み、俺の隣に腰かける。
俺は入れ替わるように席を立ち、お店のコーヒーメーカーからタカさん専用のマグカップにコーヒーを注ぎ手渡す。
そして、もといた席に再び座る。
「あぁ、ゆうとあんがとさん。あっ、そーだ、悪いけど、今日閉店間際にちょっとめんどい飛び込みの客が来る・・・かも~。はぁっ・・・まぁ、もし来たらよろしくちゃん」
はぁとまたため息をはく。
なんていうか、わかりやすいよね。
ちなみに、飛び込みってのは予約なしで直接お店に来店されるお客様のことだ。
「・・・“洋子”さんっすか?」
「あ?なんでお前っ・・・はぁ」
多分、タカさんは何か言おうとしてたんだと思う。
だけど
「はよーっす。って、ええ?タカさん??おはようございます。今日早朝セット予約入ってました?」
という声にかき消されてしまった。
声の主はマサトという、俺の唯一の同期の男。人懐っこいタイプで甘え方もうまく、先輩方にも可愛がられている。
そして、俺の前に3ヶ月ほどタカさんのアシスタントについていたこともある。
「マサトおはよ。今日はタカさん、早起きは三文の得ってことわざを実践したらしーよ」
「おい、ゆうと、なんだそりゃ」
「えぇ?なになに。どうせ家に連れ込んだ女が案外面倒くさいタチで逃げてきたとかじゃないんすか?」
「おい、マサトその辺は分かってても察して黙っといてやれよ」
俺はわざとらしく声を潜め、にやにやとタカさんを見る。
「はぁ・・・今日はもう帰ろうかな」
そう言ってガックリと項垂れるタカさんに
、マサトと俺は笑うばかりだ。
「さて、マサト。タカさんからかうのはその辺にしてちゃちゃっと開店準備やろーぜ」
「そだな」
「タカさん、今日もしっかり働いて下さいね」
笑顔でそう言い、タカさんの背中を2、3度さすって元気づけてから席を立つ。
タカさんがちゃきちゃき働いてくんなきゃ、しわ寄せは全部俺にくるからね。
スタッフルームを抜けてフロアへ向かうともう既に後輩たちが開店準備を始めているところだった。
「「「おはよーございます」」」
「おはよ」
「おはよう」
朝の挨拶を済ませ、俺とマサトも作業に移った。
10時の朝礼の前に、こうしてアシスタント達で開店準備をする。
前日に洗って干しておいた、カラーやパーマで使うイヤーキャップをまとめたり、毎朝来るタオル業者さんからのタオルの受け渡し、コールドパーマ液の準備にスプレイヤーと呼ばれる霧吹きの準備など。
それが終わるとセット面の鏡や机を拭いたり床を掃いたり。
そして、10時の朝礼。
今日の予約の状況や売り上げ目標などの確認をする。
朝礼のあとはスタイリストも含めスタッフ全員でお店の掃除。
11時のオープンに合わせて、お客様を迎え入れる準備を整えておく。
今日もタカさんの予約はびっしり。
下手をするとお待たせするお客様も出てくるかも知れない。
「あっ、アッコちょっと待った」
目の前を通り過ぎようとしていた後輩を呼び止める。
「はい。シャンプーですか?」
「そうそう。今日は多分1日タカさんのお客様のシャンプーお願いしそうだから、そのつもりでよろしく」
「了解です」
そう言うとアッコはにこっと笑った。
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