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【番外編】マサトの場合~プロローグ~
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俺は、ひどく動揺している。
いや、狼狽していると言っていい。
考えれば考えるほど、思考は難解な迷路に迷い込んだように『答え』を見つけられず永劫の時をさまよう。
「あ、ゆうとちょっと変なこと聞いていいか?」
それは、ある朝のこと。
ゆうとにとっても、俺にとっても、なんてことない日常のひとこま。
「おっはよー。どした?」
いや、正確にはゆうとにとっては何の変哲もない日々の中のことであるが、俺の日常は今、由々しき事態に見舞われ通常運転できる状態ではない。
・・・だからと言って他人にそれと悟らせるほど、俺は自分を見失ったりはしないが。
「お前さ、兜合わせってやったことあるか?」
俺の言葉に、ゆうとは不思議そうな顔をする。
「かぶ・・・なんだって?」
「兜合わせ、知らねぇの?まさか、本当に・・・知らない?男なら知ってて当然、やったことあって当然の行為って聞いたんだけど・・・その顔だと、まじで知らねぇみたいだな。あ~・・・そか。わりぃ。なんでもねぇ。今の、忘れて?」
ゆうとは、本当に知らないようだった。
嘘つくような奴じゃないし、てか、嘘つく必要もないし・・・。
俺の心は、また乱れ揺らいでいる。
その日の俺は、らしくなく小さなミスを繰り返した。
なんてことない、小さなミス。
カラーのお薬を多く作りすぎて余らせたり、後輩が既に掃除を終えているところをまた掃除してみたり、ブローの途中でブラシを落としたり・・・。
なんとも、弛んでいる。
致命的なミスこそないが、このままの状態が続けばいずれ取り返しもつかない大きなミスをしそうで怖かった。
プロとして、恥ずかしくない仕事をしなければ・・・。
俺は、日常の安定を取り戻すため、 不安定に揺れる心を箱に閉じ込めしっかりと鍵をかけた。
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