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家に帰ると今にも角が生えてきそうな母に怒鳴られ、尻を叩かれ、怒られる。
明日はちゃんと掃除をすると約束して、俺は眠りについた。
翌日、朝から叩き起こされ俺は約束通り部屋の掃除を始める。
雑誌や漫画を纏めて紐で縛り、1階へ運ぶと母が階段下で廊下の掃除をしていた。
「雑誌とか車庫に置いておいてね~」
『うん』
31日…俺がこっちに残りたいと言ったら母は何て言うだろう…。
やっぱりダメだと言われるんだろうか…。
『あのさ…母ちゃん…。あの…』
「なによ、改まってどうしたの?あ、お小遣いならあげないわよ?」
『や…違くて。その…』
「なぁに?言いづらい事なの?」
『…やっぱり…何でもない』
俺は言えなかった。
何て言っていいか解らなくて…。
残ってもいいかって言ったら何で残りたいのか聞かれるだろうし、理由を何て言えばいいか解らない。
1人でいる恋人と一緒にいてやりたい…そうは言っても相手は男だし…連れて来いって言われたら連れて来れない。
友達と約束あるとか言えば良いのかもしれないけど…何か友達って言いたくない。
色んな事を考えてたら、言えなくなって、俺は雑誌を持って車庫に逃げた。
『年越しはここにいたいって言えばいいだけだろ…』
溜め息をついて部屋に戻り、ボーッとしながら黙々と掃除を続けた。
俺は結局「家に残りたい」そのひと言が言えずに3日も経っていて、もう明後日には出発してしまう。
暇があったら遊びに行くと言ったけど、母に色々と手伝いをさせられ遊びに行く暇も無かった。
夜になってベッドでゴロゴロしていると、携帯が鳴って画面には草野の名前が出ていた。
『どうしたぁ?』
「何だよ、その出方は」
『別にいいじゃん。どうした?遊びの誘い?』
「遊びじゃねぇけど、今…お前の家の近くなんだけど出て来れる?」
『近く?どこ?』
「公園の北側入口にいる」
『わかった、ちょっと待ってて』
電話を切るとすぐにコートを手にとって玄関に向かう、バタバタと階段を下り、靴を下駄箱から出していると、パジャマ姿の母が「こんな時間にどこ行くの」と、少し怒り気味で話しかけてきた。
『ちょっと…用事…』
「こんな時間に?」
『こんなってまだ10時じゃん』
「まだじゃない。もう10時でしょ?」
『すぐ帰ってくるから。と…友達が用事あって近くに来てるんだって』
「…友達?」
『…友達…』
「用が済んだら早く帰ってきなさいね」
『わかった』
俺は急いで外に出て、公園に向かった。
入口にあるパイプに腰掛けた草野が俺に気付いて立ち上がる。
「よぉ」
『よぉじゃねぇよ。何してだこんな時間に』
「牛丼食った帰りにコンビニ寄ったらさ、これ見かけて…お前よく食ってるよなって思って買った、で、届けに来た。」
『はぁ?』
手に持っていた袋の中身を覗くと、確かに俺がよく買うプリンが2個入ってて…
『お前、これ届ける為にわざわざ来たの?』
「何だよ…悪いか?」
照れくさそうに目線を逸らした草野が何だか少し可愛かった。
『あー…サンキュ…』
袋を受け取ったら、もう帰らなきゃいけない。
もう少し一緒にいたい…。
別に話すことなんて無いけど…ただ一緒にいたかった。
「これ…このプリン見たら、お前に会いたくなって来た」
不意討ちの様にそんな事を言われて心臓が跳ねた。
「少しだけ」
『バカ…ここ外だろ…』
「暗いしわかんねぇだろ、お前チビだし腕の中に入れたら顔も見えないだろ」
『チビじゃねぇし』
草野は俺の腕を引いて抱き寄せた。
「何だろな、何か会いたかった…」
『寂しがりかよ』
草野は「そうかも」そう言って笑った。
触れるだけのキスをして「満足した、帰るわ」そう言って俺の体から手を離すと持っていた袋を俺の腕にかけた。
「帰ってそれ食えよ」
『おう、2個一気に食うわ』
「じゃぁな」
草野は来た道を振り返ること無く歩いて行く、俺も草野の姿が見えなくなってから小走りで家に帰った。
玄関で靴を脱ぎ捨て、階段を駆け上がって部屋に入り、袋を机に置いてベッドにダイブした。
しばらくして、モソモソと起き上がり袋の中からプリンを取り出し、食べながら何でだろう…何だか泣きそうになった。
『プリンうまいな』
2つとも食べると言ったけれど、何となく勿体無い気がして残した1つにマジックで名前を書いて冷蔵庫にしまった。
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