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【兎黒】2人はそれを「しあわせ」と呼ぶ 1
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⚠ATTENTION
らずまる。さんリクエスト
R18
未来捏造
黒尾受…を目指した
子どもの頃から通い慣れた幼馴染の家。
久々に会うおばさんへの挨拶もそこそこに、研磨の部屋へ転がり込む。案の定ベッドに寝っ転がりゲームをしていたが気にも留めずダイブし泣きついた。
オフの日はゲームしてんの相変わらず変わってねぇんだな、なんて世間話をする余裕なんか今の黒尾には持ち合わせていない。
「ちょ、重た…!クロ?!
って、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……!!」
「けんまああぁぁぁ~~~~~~~~~!!」
苦しむ研磨がゲームから目を離すと、ゲームオーバーの効果音が鳴った。
今の黒尾を表すには申し分ない演出だった。
***
それはつい3時間程前に遡る。
「え…」
「ですから、是非とも黒尾さんに引き受けていただきたいのです!」
若干引き気味の黒尾をゴリ押すこの女性。
どこを取っても美人で、この女性にそんなものを勧められたら二つ返事で了承してしまいそうである。そういった意味では先程差し出された名刺の“営業部推進課”の文字にも納得頷ける。
そしてプレゼン内容はこうだ。
『10~30代女性に聞いた!
抱かれたい男~プロスポーツ選手部門~』
1位 火神大我(バスケットボール)
2位 黒尾鉄朗(バレーボール)
3位 橘真琴(水泳)
…一体どこ調べなのだろうか。
偏見とクロスオーバー満載のランキングだ。
その番付に書かれた名は各種目各界で活躍し、よくメディアでも目にするものばかりだった。光栄といえばそうだが、それならば1位の奴が適任ではないかと指摘したのだがどうやら現在海外で活躍中らしく現地へ行こうにも予算オーバー。わざわざ一時帰国するような予定も取れないらしい。
そこで白羽の矢が当たったのが2番手の黒尾、ということだそうだ。考えあぐねていると、トドメと言わんばかりに出演料チラつかせてくるあたり彼女もプロだ。その額にあえなく了承してしまった、という何とも安直な流れだった。
あれよあれよという間に交渉成立。
撮影の日程やスタジオを指定され、握手なんかを交わしてしまう始末だ。いつの間にやら詳細の書かれた資料を渡されていたのだから恐ろしい。
「事前の打合せはまたメールでお知らせ致しますね!」
彼女はキッパリ告げると嵐のように事務所を後にした。
なるほど営業職とは親しみやすさと勢いが重要なようだ。
あしらうことだってできたはずなのに、らしくもなく押し切られてしまった。事の俊敏さに呆然としつつも、カサリともう一度資料に目を落とす。
“君を大切にしたいから”
一際大きく強調されたその文字がキャッチコピーだ。
その下には撮影のコンセプトが羅列されている。
「雄み全開で!」
「ギラついた熱を孕む視線」
「妖艶」
「ワイルド」
ははぁ…。
5つ目のコンセプトに黒尾は頭を抱える。
「理性ギリギリの攻め感」
…“攻め”“抱かれたい男”
そうか、世間ではそういう目で見られているのか。
伏目がちに資料に目を落としたままぼんやりと考える。
男としては、そりゃあ誉な事だろう。
しかし黒尾には一種皮肉めいて聞こえてしまう。
そう、なぜなら…、黒尾鉄朗はネコである。
***
「え、それで、引き受けたの」
一連の流れを粗方話し終えると、頬を引きつらせながら訊ねる研磨。そんな軽く引かないでほしい。じと、とした視線から逃げるように目を逸らす。今抱える問題からも逃げられたらどれだけいいことか。
黒尾の様子を見て研磨は溜息を零す。
そしてすっかり興味をなくしたようにそっぽを向いて、ゲームに戻ってしまった。研磨によって操作されたゲーム機からコンティニューの効果音が鳴る。
「事情はわかったけど、
俺よりも伝えなきゃいけない人いるでしょ?」
「う゛っ」
「言いにくいの、わかるけど…報告しなよ。
あの人、うるさそうだし」
今日の研磨はやけにズバズバと痛いところを突いてくる。
いや、あと一押しの勇気が欲しくてここに来たのだけれど。黒尾が伝えなければいけない人。それは恋人である木兎光太郎。高校からの悪友。同じステージを夢見て、高校卒業を機にその関係は恋仲になった。大学に進学し、お互いプロを目指す者同士日々切磋琢磨した。時折甘い雰囲気にもなって、それなりにケンカもして、そのたびに仲直りをして…。プロになってからはお互い忙しく、会えない時間も多くなっていった。それでも相手の活躍をメディアを通して見ると胸が高鳴るし、自分の事のように嬉しく思う。まあ要するに、結構長い付き合いでうまくやっていると思う。
それが木兎もだって、思いたいんだけど…。
それで今悩んでいる原因はその“メディア”だ。
ありがたいことに、プロになってからは雑誌なんかで取り上げてもらい、そこから仕事の幅も広がっていった。
新商品の広告だったり、何かのイメージモデルだったり…その都度によって様々だ。
で、今回黒尾に舞い込んできたものが…
≪未成年避妊具推奨モデル≫というわけだ。
「…クロのことだから、どうするか、
決まってるんでしょ」
黒尾がアドバイスを求めてここに来たわけではないことを、研磨はわかっていた。頭を整理するため、言いはしないだろうが昔からそうだ。何かあるとこうしてうちに来て、話すこと話して気が済んだら気ままに帰っていく。
もちろん研磨はそれにいくらでも付き合うつもりだ。
これも昔から変わらない。
問いに否定も肯定もしないのをやっぱりかと思いながら、再びゲーム画面に目を戻す。これ以上何も言うつもりはないらしい研磨に黒尾はどこかほっとしつつ、その意向に甘えさせてもらうことにした。
軒並みな表現だが、流石幼馴染。
居心地の良さに落ち着いたのか、今日初めて安堵の溜息を吐いたのだった。
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