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あの日々からの、一歩 5
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そこから、全てがスローモーションの様に見えた。
雷に驚いた猫が暴れて、影山がバランスを崩すのが見えた。
考えるよりも先に体が動いていた。
視界に映る雨粒一つ一つが鮮明に見えて、自分の心臓の音が雨音よりも大きく聞こえた。
全神経が研ぎ澄まされる感覚。
ドサッ!!!!
2人と1匹で地面に倒れる。
猫はそのままどこかへ逃げて行ったけど。
先に起き上がった影山が、慌てた様子で聞いてくる。
影「ってぇ…はっ!!国見っ!大丈夫か?!…そのっ、腕…!!」
普通だったら2人とも怪我していると思う。
腕を曲げたり伸ばしたりして、若干痺れがあるものの異常がない事を確認すると口を開く。
国「…平気みたい。一応鍛えてるしね。…影山は??」
ふと視線を自分の腕から影山に移すと、涙目の影山があって普段は表情に表れない俺でも少しぎょっとした。
国「ちょ、何?!…どっか、痛いの??」
影山の姿を確認するけど、目立った怪我はしてないように見える。
しかしその手に赤い線が3本入っていた。
猫が…、引っ掻いたのか…。
影「ちがっ…!こ、怖か…っ!!」
本格的に泣きだしてしまった影山。
え…っと、怖かったこと…
あぁ。
国「高い所から落ちたから…?」
問うも、影山は首を横に振る。
…じゃあこいつ何で泣いてんの。
このままじゃ埒が明かない。
ここで涙の理由を聞くことを諦め、影山の腕を引っ張る。
国「影山、立てる?家近いから寄ってけば?お前の家着くまでに風邪引くでしょ…?」
もうこの際、何とかは風邪引かない、なんて言ってられない。
万が一、ってこともあるのだ。
てか俺のが風邪引くから。
そうなっては濡れ損だ。
一瞬、影山は気まずそうな、申し訳ないような顔をして頷いた。
その表情に気付かなかった訳ではなかったが、あえてそれを無視した。
目元を赤くした影山が、こんな状況で不謹慎にも可愛いと思ってしまったのだからつくづく重症だと思う国見であった。
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