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風邪っぴきlullaby 4
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カチ、カチ、カチ、カチ、
ぼぉっとする頭に、部屋に掛けてある時計の音が響く。
どうやら暫く眠っていたようで、辺りはもうほの暗い。
その時だった。
ガチャ!バタン!!
ドタドタドタドタドタドタドタドタ!!!
玄関が開いて、大きな足音がこちらに向かって来る気配。
続いてバタン!!と大きく開かれた部屋の扉から現れたのは、やはり黒尾だった。
息を酷く荒げていて、その様子から急いで帰って来たのだという事がわかる。
月「…ど、して………っ」
黒尾が帰宅するにはまだ随分と早い時間のはずだ。
戸口に上着やら荷物やらを落とし、険しい表情でずんずんとベッドに向かって一直線に歩いて来る。
側まで寄ったかと思うとそのまま床に膝をつけ、横になった月島を布団の上から抱き締めるように腕を被せた。
黒「忠くんから聞いた…。忠くんには言えて、俺には何で連絡くれねーの…っ。………知ってるよ。蛍が最近俺に遠慮してること。でも俺ら、恋人じゃねーの…?」
怒っているのかと思ったが、その声音はだんだんと小さくなっていって、どうやらそうではないらしい。
月「っ……、ごめ、なさ…っ」
ボソリと小さく謝ると、黒尾は上体を起こして月島の顔を覗き込んだ。
その目は本当に心配そうに、不安に揺れていた。
いつもは切れ長で自信に満ち溢れ、余裕そうなその目が力無く眉を垂らし、こちらの様子を窺っている。
黒「しんどい…?何か食いたいもんとか、ある??」
ペタペタと首の周りを触ったり、額に手をやったりと長くてしなやかな指先が触れていく。
月「だいぶ、落ち着いた方です…。あまり食欲は、ありません」
マスクの中で吐いた自分の息が熱い。
声は篭ってしまったが、黒尾はしっかりと月島の言葉に耳を傾けていた。
黒「そっか、よかった…。でもちゃんと食わなきゃ薬飲めねぇだろ。…よっしゃ!鉄郎君が愛しの蛍ちゃんの為にちゃちゃっと何か作りますかね!」
言うが早いがスクっと立ち上がり、月島の頭をくしゃっと一撫でして背を向けた。
そして黒尾が出て行ったのを確認し、自分でも触れられた箇所に触ってみる。
ふわふわする…。
そのふわふわは、きっと熱のせいだ。
そうに違いない。
心地良い安心感に包まれ、黒尾が再びやって来るまでの間、瞼を閉じる事にした。
遠くで小気味良く何かを切る音や、水の音や足音がする。
自分のものではない生活音。
一人ではない何よりの証拠であった。
ありふれた生活音が、子守唄のようで。
そこに黒尾の存在を感じながら、また眠りの世界へと落ちてしまった。
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