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風邪っぴきlullaby 5
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黒「蛍ー、起きれるか?…って、また寝てんのか」
慣れないお粥をどうにか作り、寝室の扉を開ける。
思ったより時間を掛けてしまい、30分以上は経ってしまっている。
コトリ、とお粥をサイドボードに置いて、月島の寝顔を眺める。
まだ息が苦しそうだ。
さっき触れた首元も、汗ばんでいた。
あとで拭いてやらなければ…。
それにしても…、どうしてもっと甘えてくれないかね…。俺の嫁さんは……。
甘え下手な恋人のために、同居を始めたはずだ。
少なくとも、自分の中ではそうだった。
少しでも頼れる男になろうと頑張ったつもりだったのだが、返って気を遣わせてしまっているのが現状だ。
蛍の前では、格好良くいたいのに。
その時ふと目に入った額の冷えピタが、熱のせいですっかり乾いてしまっているのに気が付いた。
新しい冷えピタのフィルムをペリペリと剥がし、起こさないよう注意しながらそっと付け替える。
月「ん…、く、ろぉ…さん?」
しかしその冷たさに、月島の目が開いた。
黒「わり、起こした。…食える?お粥。」
月島の色素の薄い瞼がゆるゆると持ち上がり、熱のせいで潤んだ双眸が現れた。
それはさながら、湖面に浮かぶ満月のようで。
黒尾はつい見惚れそうになるのである。
月「ありがとう…、ございます」
ムクリと頭を押さえつつ起き上がる。
カチャカチャと食器同士が音を立てて、サイドボードからおぼんに乗ったそれが膝の上に運ばれてくる。
黒・月「「ん」」
黒尾がスプーンでお粥を一口掬ったものを差し出すのと、月島がおぼんごと受け取ろうと手を差し出したタイミングが同じだった。
お互い、状況を理解しようと固まる。
月「…まさか、あーんしろって言うんですか…?」
黒「それしかないでしょ。看病と言えばあーんだよ?!」
月「さも当たり前のように言いますね。…っ、今回だけ、仕方なく、ですから…っ」
行き場を失った手を仕方無しに下ろす。
黒「やけに素直ね、蛍ちゃん。風邪で不安になっちゃった??」
そう茶化しながらふぅ、ふー、とスプーンの上で湯気を立たせるお粥に息を吐く。
その白い湯気が、黒尾の息によって横へと流れる。
黒尾のその横顔は、どことなく嬉しそうに見えた。
月「黒尾さんが言ったんじゃないですか。大体…っ、僕は一人で…黒「はい、あーん」…っ」
ずい、と口元にスプーンを寄せられ言葉を遮られる。
躊躇いながらも口を開け、それを流し込む。
温かい、半液体のそれが食道を通り腹へと溜まる。
そこからぬくもりが広がっていくかのようだった。
黒「んまい?蛍薄味好みじゃん?ちゃんと塩加減注意したんだけど…………―――――って、蛍っ?!」
黒尾が一口分をスプーンに乗せながら、ちらりと月島を見遣るとその頬に雫が伝っていたのだ。
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