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風邪っぴきlullaby 6
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ほろり、ほろりと涙を溢す月島を黒尾はただただ凝視するしか無かった。
月「しょっぱい…っ、しょっぱいんです…、けど、ありがとう…黒尾さん…っ」
瞳から大きな雫が滑り落ちる。
どんな装飾品よりも、綺麗に見えるのはどうしてだろうか。
黒「っかしーな…、ちゃんと味見して…っ」
ズッ
一口啜ってみる。
それを見て月島はふふ、と微笑む。
月「黒尾さん、もう一口。あー…、ん」
口に運ばれるお粥は、確かに好みの優しい薄味だった。
しょっぱいのは、自分の涙で…――――――。
一生懸命、自分の事を考えて作ってくれたのだと思うと愛されていると感じる。
ただそれが嬉しかった。
米を水で煮ただけのそれなのに。
どうしようもなく、この人を愛おしいと思うのだ。
口元に運ばれ、促されるままに口にする。
あまり食欲が無いと思っていたのに、すっかりそれを食べ切ってしまっていた。
月「ごちそうさまでした」
黒「ちゃんと食ったな。これ片してくるから、薬飲んどけよー?あ、それとも…薬も飲ませて欲しい?」
にやにやと笑いながらまた戯けた調子で冗談とも、本気ともとれる発言をする。
いつもの月島なら、即一蹴してやるのだが…。
なかなか思うような悪態が出てこない。
いや、しかし社会人である黒尾に移してしまうかもしれない。
ダメだ…。ダメ、なのに…。
口籠る月島を見て、黒尾は珍しい反応もあるもんだと一瞬目を見開く。
月島が何を躊躇っているのかは、大体見当がつく。
それを見越して、パチリと錠剤を取り出す。
黒「蛍、口開けて…ちょっと上向いて?」
先程のふざけた態度とは打って変わって、やけに落ち着いた声が耳に届いた。
移してしまうかもしれない、恥ずかしいのに…。
それなのに………―――――――――甘えたい。
迷っている間にも黒尾は錠剤を口に含んでしまうし、自分は自分で思考とは裏腹に黒尾のシャツを掴んで口を半分開けてしまっている。
認めたくはないけれど、期待、してしまっている自分がいた。
黒尾が水を含んで、月島の顎に指を添える。
ゆっくりと顔が近づいてきて、きゅっと反射的に固く目を閉じた。
生温かい水が流れ込み、必死にそれを飲み下す。
全てを飲みきって、薄く瞼を開けると黒尾と目が合った。
ずっと見られていたのかと思うと、更に羞恥が増す。
ちゅっ
軽く唇を啄むように吸われ、離れていった。
黒「ん、いい子」
親指で口の端に滴った水滴を拭いそれをべろりと舐めとった黒尾は、やけに上機嫌だった。
おぼんを手に、部屋から出て行く姿を黙って見送る。
少しだけ、物足りないだなんて。
絶対に言えないと思った。
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