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誰
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いよいよ男の手が届きそうになった時
俺の体は後ろに強い力で引っ張られた。
「っ…!!」
そして温かい体に包まれる。
「…何やってんだよ、亜嵐」
ぎゅっと、強い力で。
「…りん、や?」
男の手は俺を抱きしめていない方の手に収まっている。
「それよりも、お前か…」
「痛いっ!!……離せ!!」
「…無理な相談だな。こいつを傷つけようとしたんだ」
冷たい無表情のまま掴む力を強くする凛也の手は男の手を本当に折ってしまいそうだった。
「折れるっ…!!ほんっ、に折れるっ、からっ…離して…くださいっ…!!」
苦痛の声を漏らしながら懇願する男の手をなおも凛也は強く握っている。
「凛也っ…!」
その腕にしがみつく。
このままだと本当に腕を折ってしまいかねない。そんなことになったら凛也が罰を受けてしまう。
「もう、大丈夫…だから、離して」
凛也の腕の力が少しずつ緩んでいく。
手は拘束したままだが、男の顔色が幾分か良くなったのが見て取れた。
「お前…ほんとに何者?」
男に問いかけるも、何も答えない。
「裕哉の郵便受けに、何してたんだ?」
なおも男は答える様子はない。
痺れを切らした俺は、裕哉の郵便受けに向かおうとした。
すると、どこからともなく聞き慣れた声が響く。
「ちょっと来るのが遅かったみたい、だね」
「!!!裕哉!」
「あ…」
男に目を向けると、恍惚とした表情で裕哉を見上げている。
そんな目でそいつを見るんじゃねぇよ
「裕哉…こいつ、知り合い?」
「んー、残念ながら初対面かなぁ?」
「しょ…たいめん?」
先程まで恍惚としていた表情をしていた男は打って変わって暗い顔になり、震えだした
「何、言ってるの?僕だよ…君の恋人。」
え…今こいつ…なんて?
「恋…人?」
「……あぁ君か。ごめんごめん。暗くてよく見えなかったよ!」
一瞬だけ顔を歪めた裕哉は直ぐに平静を装い、言葉を並べる。どうして、繕う必要があるんだ?男が余計に自惚れてしまいかねないのに。
「ゆう…」
「裕哉」
俺が言葉を発するより早く、凛也の声が異様な雰囲気に満ちた空間に響く
「こいつはいきなり亜嵐に襲いかかって来たんだ。そんな奴がお前の恋人な訳ないだろうだとしたら、お前の趣味疑うぜ。」
「襲いかかって…?…それ、本当?」
驚いたような表情を見せ、裕哉は男に問いただす。
「っ、俺の…邪魔をしようとしたから、っ!!が、っ」
裕哉は肯定の返事をした男の首元を勢いよく掴み、立ち上がらせると、至極綺麗な笑顔で
「そっか…うん。話し合わせて取り敢えずできるだけ穏便に事を進めようと思ったけど…無理みたいだね。」
そう言うと後ろ首を掴み、男を玄関の方に連れて行く。
出る前に此方を振り返り
「巻き込んで、ごめん」
と、泣きそうに歪んだ顔で言った。
初めて見た裕哉の顔に俺たちは何も言うことなく玄関を出る裕哉の後ろ姿を只々見送ることしかできなかった。
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