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酷いなぁ
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「っはー!めっちゃおもろかったな!」
劇が終わり、会場内はボルテージが上がっている。
「裕哉、お前水樹の所行ってこいよ」
「しのちゃん?…良いの?」
「良いも何も…今日はもうシフトねぇし、別に俺らは構わない。」
「せやせや!行ってこいって!」
「…うん、ありがと」
俺は直ぐに水樹の元へ向かった。
*
「あーあ、結局くっつくんかいなあの二人。」
「まぁ、彼奴が幸せなら、其れで。」
「まぁなぁ…ちゅーかそろそろ此れ、着替えへん?」
「あぁ…」
「「貴澄先輩!写真撮って下さい!!」」
「あー、ええよ!おいで!」
きゃあと女みたいに歓声をあげて貴澄の横に並ぶ。
チラチラと此方を顔を赤らめて此方を覗き見してくる視線が煩わしい。
「俺、先行ってるわ」
「あぁ…すまん!後から行く!」
思えばこの時、少しの煩わしさなんて我慢していれば良かったのかもしれない。
着替えを持って更衣室の前までやって来た。
此処ら辺は文化祭では使われていないので、人気が少なくて落ち着く。
やっぱり静かな方が、俺に合ってるのかもしれない。
裕哉のあの気の抜けたような、嬉しそうな顔が忘れられない。
分かっていたことだが、俺にはあの顔をさせることは出来ない。
救われた癖に、救うことが出来ない。
考えているうちに、更衣室に辿り着く。
そして扉に手を掛けようとしたとき
「しーのぶチャン。」
「……!!!!」
この世で最も聞きたくない、此処に居るはずのない声が、俺の耳に届いた。
「な、んで此処に」
「何でって…酷いなぁ。忍チャンに会いに来たに決まってるで、しょ!」
腕を強く引かれ、更衣室の隣の空き教室へと引きずり込まれる。
「っ、ぐ」
手首を握る力が強く、抵抗しても無意味だ。
「そんな格好して、何?俺のこと忘れて、1人学校生活楽しんじゃってんの?忍チャン。」
「お前には、関係ないだろ!!」
「お前?」
顔が変わる。今までのへらへらした笑顔とは反対に無表情に俺を見つめる。
「ぐ、ぁっ」
手首を握る力が強くなり、思わず苦痛の声が漏れる。
「陵先輩、だろ?」
ああそうだ。俺は此奴に力で敵わなかった。
丘咲陵。
俺が狼と呼ばれるようになった理由。
それを作った奴。
忘れたくとも、忘れられない奴。
「一生会いたくなかった」
そう言うと、丘咲は
「俺は死ぬほど会いたかったよ。忍」
そう言って残酷な笑みを浮かべた。
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