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「私ね、アランとサムとは友人だったのよ。わりと親しくしていたと思うわ」
「“だった”……過去形なんだな。四年間ろくにおっさんと会話してないって聞いたんだけど、まじ?」
「ええ。まあ、私が一方的に避けられているのだけれど」
「そりゃまたどうして?」
「多分これのせいよ」
そう言ったカローラは、自らの足を指さす。スカートから伸びた彼女の足は平均よりかなり細いように見える。車椅子の影響だろうか、とロイが考えたところで、カローラは小さくため息を吐いた。
「私の足がこうなったのは自分のせいだと責めているの。……私を見る度に辛い記憶が蘇って嫌なんでしょうね」
「あんたが車椅子になったことに、おっさんは関係してるのか?」
「関係、というか、四年前の事件が原因よ」
ロイは目を見開く。それは初耳だ。あくまでアランと、亡くなった彼の恋人ーーサムのことについての噂しか聞いたことがない。
「そうね、どこから話そうかしら。……知っているかもしれないけど、そもそも四年前の任務の内容は、アルファが企てた毒物テロを阻止するというものだったの。あの時全世界はパニックに陥り、経済は乱れに乱れていた。NEOは当時ももちろん裏で駆け回っていたわ」
国際テロ組織ーーアルファ。
その数と規模は計り知れず、世界の大規模なテロリズムには大体アルファが絡んでいると言っても過言ではない。
そんなアルファは四年前に毒物テロを全世界に無差別で行った。毒ガスを爆発と共にばらまいたり、飲料水に毒を混入させたりとその手口は恐ろしく残忍であった。被害者は世界各国でどんどん増えていき、国連軍もお手上げ状態。そこでNEOの登場というわけである。
「その頃から優秀だったアランと、彼のパートナーであるサムは世界を飛び回ってアルファを追いかけていた。そして徐々にその勢力を減らしつつあったの。……でも、そんな時に、アルファから声明が出された」
「“次のターゲットはワシントンD.C.だ。一人残らずキリストに会わせてやる”……だったっけ?」
「そう。ワシントンは大パニックだったわね。暴動や混乱が相次ぐ中、NEOは情報を掴んだ。アルファが毒物兵器を開発している本拠地の居場所よ。そこでアランとサム、それにワシントン支部のエージェントは総出で向かったわ。ーー私もね」
「あんたも? アンダーグラウンドエージェントなのに?」
「その頃は地上(オーバーグラウンド)に居たのよ。ばりばりの現役で成績も良かった」
どこか懐かしむように遠くを見つめるカローラ。その瞳の中に悲しみの色が秘められているのを見て、ロイは彼女から視線を逸らし、窓の外を眺めた。無数の車がミニチュアのように動いている。彼らは何も知らないのだ。今、恐ろしいテロの陰謀が蠢いているのを。
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