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貴方に片想いをしてから、4年が経った。
「警察ですか?あの、強姦現場に遭遇したんですが。」
堂々と強姦真っ最中の彼等の前で、そう携帯に話しかける。勿論、通話なんてしてない。嘘だ。目の前の彼等は警察が来る前にと、一目散に獲物を捨てて逃げていく。この現場に残ったのは、俺と…やっと会う事が出来た片想いの相手。けれど、今まで想像していたような綺麗な出会い方ではなく、悲惨な出会い方。…貴方は俺の事を知らない。だから、貴方にとって俺は赤の他人。
もう、時はすでに遅し。投げ捨てられている服を着させようとしても、ビリビリに破かれているせいで、どれも着られるような物ではない。3人という複数に犯されたせいか、もうぐちゃぐちゃで。耳に入る泣き声には胸が苦しくなる。自分が来ていた上着を着せようとすれば、大げさなのではないかと思うぐらいに揺れた体。抱き上げてしまえば、震えだし、怯え出る声を必死に堪えようとする姿が痛い。
俺が知っている貴方は、真面目だけど少しドジな可愛いらしい人だった。
「中の物は好きに使ってください。」
そう言い放ち、一人浴室に置き去りにして俺は着替えの服を探す。4年経っても、小柄で細身なのに変わりがない。多分…160と少しぐらいしか身長はないだろう。大きいだろうけど、着れないわけではないから。脱衣所に行き、着替えをおいて部屋に戻ろうとすれば、異変に気付いた。変態みたいに聞こえるかもしれないけど、何も…物音がしないのだ。男同士。別にドアを開けても何の問題もないだろう。そう思い、俺は何も声を掛けずに浴室のドアを開けた。
「っ!!」
「それは、駄目です。俺は、何もするつもりはありません。…けど、こういう事するんだったら、俺は止めます。」
俺は、表面だけの貴方しか知らない。俺は、本当の貴方を知らない。
俺は泣き出す貴方をバスタオルで包み込んだ。臆病な俺は、こういう時貴方に何と声を掛けたらいいのかわからない。けど、言葉は思いつかないけど、何かしてあげられる事は思い浮かぶ。部屋が温まるように暖房をつけて、貴方が温まるようにと、ホットミルクを作る。本当は、ココアを作ろうかと思ったけど、あまり俺は甘い物が好きじゃないからココアの粉がないんだよな。
「どうぞ。…あ、寒くないですか?一応、着替え用意したんですけど。」
「…大丈夫です。」
「え、あ…そうですか。」
…俺的には得だけど。でも、バスタオル一枚だけって結構色々見えるもので。言うべきか言わぬべきか。いや、まず、俺にそれを言う勇気がない。言った方が良い…いや、恥ずかしくなって、余計に気まずくなるだけかもしれない。
「あの。」
「…はい。」
「あ…いや、お腹空いてませんか?何か作ります。」
「…大丈夫です。」
「…そうですか。じゃ…ベッド使ってください。」
しようとしたことを全部断られてしまって、何もする事がなくなったので、結局こうなった。まぁ、さっきあんな事があったし、男だからといってこんな夜遅くに帰らせるわけにもいかない。それに、体力的にも精神的にも疲れているだろうから、今日は休んだ方が良いかもしれない。のに、中々動こうとはしない。
「もう、夜遅いので。明日、送っていきます。」
「…。」
「もしかして、人のベッドで寝るの駄目な人でしたか?」
俺は、人のベッドで寝るのが駄目な人。飲み回しだとか、間接も駄目。最近は、昔よりマシになったし、自分の好きな人となら拒否反応とか全くない。…でも、全くの無反応の場合どういたらいいんだろう。遅い時間帯だ。失礼だけど、独断と判断でベッドへと連れて行き、布団を被せた。「おやすみなさい。」と一言かけて、ソファに座りなおせば感じる視線。…警戒心丸出し。流石に、好きな人を。しかも、4年間も片想いをしてきた相手に。…それと、嫌われるのが怖いというか、変な人に思われるのが嫌で、話しかける事でさえ出来なかったんだ。そんな俺が、寝こみを襲うとかそんな大層な事を出来る筈がない。
明日は、授業は午後からでバイトのシフトは入っていない。午前中に送って行こう。
課題を終わらせようと集中していたせいか、気づけば午前3時。流石に、午後から授業とはいえ、眠らずに学校に行くのは辛い。ソファから降りて、フローリングの上に横になった。ベッドの方を見れば、可愛らしい寝顔をこちらに向けている。それを見て俺は安心し、瞼を閉じた。
4年間、ずっと片想いをしてきて。3年間、会う事すら出来なくなって。やっと、会えたと思えば繁華街近くの細い路地で、3人に犯されている瞬間。完璧に助ける事が出来たわけでもない。きっと、深い傷を負ったと思う。そんな中、俺は貴方に触れる事が出来て愛おしいだとか場違いな事を思った。犯した3人を逃がしたし、俺が貴方を襲いたかったとも思った。汚い感情を俺は持っている。自覚しているだけまだマシか。それに、そんな事を実際に出来るわけでもないし。実際、触れてみて、会話してみて、好きという気持ちが増した事に変わりはない。
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