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新しい関係(拓哉視点)
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昨日、何とかなると思っても、そう簡単に割り切れる筈もなく、学校に行く気も起きず家でボーっとしていた。
普段はこんなに長く家に居る事なんてねぇから違和感を感じながらも今日は休もうかと考えていた。
けど、休んじまったらそれこそ風斗から逃げる事になっちまうんじゃねぇのか、自分がやってしまった事を風斗に許して貰えるまでは、自分は逃げちゃいけねぇ。
そう思って、怠い体を動かし、駅に向かった。
駅に着けば、案の定、風斗や他の友人達はいて、俺に遅かったなとか色々声を掛けて来た。
でも、何よりも、俺の存在に気付く前の風斗が言った言葉が心に突き刺さった。
それから、友人達の前では普段通りに振る舞うのに必死で、風斗の顔を見る余裕は無かった。
学校に着いてからは、こんなに話さなかった事はねぇんじゃねぇかと思うくらい、お互い話さなかった。
まぁ、何度か話しかけようとしたけど、昨日の今日で何を話したら良いか分かんねぇし、また拒絶の目をされんじゃねぇかと考えると怖くて話しかける勇気が出なかった。
放課後になって、一緒に帰るべきか悩んだけど、話し掛ける勇気さえ無い俺が、一緒に帰る勇気なんて持ってる訳が無くて、何も言わずに風斗を置いて先に帰った。
当たり前だった存在が、急に居なくなる感覚ってこんな感じなんだなと家の天井を眺めながらボーっと考えていた時、インターホンが鳴った。
「はい?」
返事をして画面を見れば、そこに映っていたのは、風斗だった。
一瞬自分の目を疑ったが、そこに立っているのは紛れもなく風斗で、会いに来てくれた事が嬉しい反面、何を言いに来たのか分からない恐怖で、いつもなら迷わず玄関の鍵を開けて家に入れるが、なかなか玄関の鍵を開けられなかった。
そのまま数分、開けるか開けまいか迷っていたら、
「俺!開けて!」と風斗が言ってきた。
でも、やっぱり開ける気になれず、画面越しで会話をする事にした。
「風斗?何しに来たんだよ?」
「話があるから、ここ開けろ!」
「俺は話したい事はねぇ。ワリィけど帰れ」
こんな態度じゃいけねぇって、頭では分かってたし、風斗から逃げ出す事は絶対に許されねぇ事も分かってた。
けど、何の話をされるのか分からねぇ俺は、壊れかけだとしても、まだ友人関係のままでいたい俺は、無意識の内に風斗に冷たい態度で接していた。
いつもなら俺に冷たくされると涙目になりながら帰って行く風斗だけど、今日の話はよほど大事なのか、なかなか帰らず、まるで良い案が思い付いたとでもいうかの様な顔付きに変わったかと思ったら、家の前で俺の名前を大声で呼び始めた。
俺は、風斗の行動に驚きつつも、放っておけば直ぐに大声を出すのを辞めるだろうと思っていた。
だけど、風斗は俺の考えを裏切って、大声を出す事を辞めようとしなかった。
これを続けられたら近所迷惑になるし、家に入れる以外に、風斗を黙らせる手段が思い付かなかった俺は、結局、家に上げてしまった。
普段通りに、普段通りに、そう何度も自分に言い聞かせた。
けど、会話が続く筈もなく、長い沈黙が続いた。
口火を切ったのは、俺だった。
「あのさ、風斗?」
「な、何だよ」
「ごめん」
「え?」
「ごめん。昨日は、マジでごめん。こんなん独りよがりだって分かってんだ。昨日だって、家にプリント届けに行った時に謝ろうと思った。けど、謝れば満足するのは俺だけで、お前と俺の関係をまた元に戻そうと思ったら、まだ謝ったらいけない気がした。だから、昨日は謝れなかった。ごめん。これも俺の勝手な考えで、今、謝ってるのだって自己満足な「あのさ!!!!」」
俺が謝っていると、いつもなら人の話を最後まで聞くのに、我慢ならねぇとでも言うかの様に俺の話を遮り、自分の話を聞けと言う。
けど、俺も話したい事はまだあるし、先に聞けと言っても、自分が先に話すと聞く耳を持たず、結局、俺が折れて風斗が先に話す事になった。
どんな話をされても受け入れようと、身構えた時、風斗が話し出した内容に、俺は本当に驚いた。
『もう、友達として関わらない』そんな話をされるんだと思っていた。
けど、それは良い意味で裏切られ、風斗は俺に『好きだ』と言った。
あんな事をしたにも関わらず、俺を信用すると言った風斗。
傍に居て欲しいと、そして、好きだと言ってくれた風斗。
本当はこの気持ちを風斗に伝える気はなかった。
でも、自分の素直な気持ちを伝えてくれた風斗にちゃんと答えたいと思った俺は、ようやく風斗の目を見て、『好きだ』と伝える事が出来た。
好きだと伝えた後、幸せそうに笑った風斗を見て、
(あぁ、やっぱり俺がコイツの事を守ってやらねぇといけねぇな)と改めて感じた日になった。
まぁ、俺達の間の問題が消えた訳じゃねぇけど…
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