アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8本目、決断。
-
あの後笹窪さんと僕は特に何を話したわけでもなく駅前で別れた。
笹窪さんは別れ際に「変なこと言ってごめんね」と告げて帰っていった。
僕はその時も上手く頭が回らず、また六十点の笑顔で「大丈夫です」と返した。
笹窪さんの言葉でアルファ性全体の印象はまだ難しくても、笹窪さんに対する印象は良くなったのかもしれない。けれど警戒心は弱まらない。
笹窪さんは大丈夫かもしれない、そう思いたかった。
僕は家に着いてからすぐにスマホを開いた。
無料通話アプリで連絡をいている同じオメガ性の友だちに今日のことを伝えてみようと思ったからだ。
連絡相手は二歳上で名前は長野さん。昨年番ができたらしい。
長野さんはお互いの顔を知らなくてもとても仲良くしてくれる。
オメガ性同士だし、年上だしとても頼れる存在。
『バイトお疲れ様。
アルファ性の人がそんなことを言ってたんだ。
僕の恋人はそんな事言わないや笑
でも、一理あるんじゃないかな?
周りは僕らを偏見してるけれど
いうなればアルファ性も偏見されてる気がするんだよね』
長野さんからの返信は早かった。
確かにそうなのかもしれない。
僕も正直アルファ性の人のことを“普通とは違う”という目で見ていた。
アルファ性本人の笹窪さんと長野さんのどちらからもアルファ性に対する印象について考えさせられるような言葉を受け取った。
過去に囚われ色んなことを悪く考えすぎていたのかもしれない。
せめて笹窪さんには頑張って接してみようと思えた。
これを機に僕のこの性格も、アルファ性の人に対する印象も変えられるかもしれない。
もう怯えて生きていくのは絶対に嫌だ。
___この日、僕はきっと正しい決断をしたと思っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 595