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12本目、どうして。
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次の日、沢木から噂話を聞いた。
「え…アルファ性の人が…?」
「そう。あのヤリサーって言われてんとこにいるらしいよ」
「…」
噂話が大好きな沢木はアルファ性の話もよく仕入れているみたいでたまに教えてくれる。
いつも聞いていると沢木はどうもアルファ性のことを好いてないみたいで、怪訝な表情で話していることが多い。
「紅野?」
「なに?」
「いや、いつもなら『アルファ性のやることだからね』とか言うのに今日は黙るから」
「…別に」
それは…。
それは笹窪さんはそうじゃないと
アルファ性だけどそうじゃないんだと言ってくれた。
だから全員を纏めて同じ目で見ることは辞めた…。何となく沢木にはそう言いづらかった。
「おい、紅野!あいつだよあいつ!今話してやつ!」
「えっ…?」
突然大声を出すものだから驚いてしまった。
たまに心臓に悪いことをしてくるから注意してもらいたいものだと思いつつも沢木が指をさす方を見るとそこには金髪で背の高い男の人がいた。
周りには女の子を連れて歩いてる。
連れてるというよりついてきているようにも見えた。
「女の子誑かして何がいいんだか」
沢木はそう言うと鋭く睨みつけた。
あの男の人は明らかに周りとは違う雰囲気だ。
気づけば僕たちだけではなく色んな人が彼を注目していた。
今まで僕が知らなかっただけで有名な人なのかもしれない…。
そうでなくてもとんでもなく目立つ彼は一体…。
「沢木、嫉妬はやめなよ」
笹窪さんの言葉が頭の中で何度も繰り返される。
アルファ性は全員が同じではないとそう言っていた。けれど目の前の彼を見ていると前の僕に戻りそうになる。
女の子を連れて歩いているアルファ性を見ただけで?沢木から噂話を聞いただけで?
「嫉妬じゃねえし!俺だって彼女作ろうと思えばいつだって出来るから!」
複雑だ。何とか動揺を隠そうと振る舞うけれど心の中はとても落ち着いては居られなかった。
目の前に“アルファ性”の人がいる。
そして彼は周りに女の子を連れて歩いている。
沢木から聞いた噂話の内容…。
これらのせいで少しマシになってきていたイメージがまた元に戻ろうとしているのを僕は必死に耐えていた。
「俺だって合コン行けば連絡先聞かれるし…女子から声かけられるし…飲み会誘われるし…」
気が気ではない僕の隣で沢木は何かを言っているもののもはや耳には入ってこない。
会話を続けなくてはと思いつつも目の前が気になってしまい沢木には申し訳ないが黙って気づかれぬようアルファ性の彼を見ていた。
「え〜、誠人くんもう行っちゃの?」
誠人…と言うらしい。
集団から離れる彼に対して周りの女の子たちが次々声をかけている。
「ごめんね。行かなきゃならないところがあるからさ」
「え〜どこどこ?彼女さんのところ?でも彼女はいないって言ってたよね?」
「あー…そうか。そうだな。うん、そうだ」
大変だ。目が合ってしまった。
流石に長い時間見すぎてしまっていたせいか、見ていたことがバレたのか。
咄嗟に目を逸らしてしまった。
ずっと目を合わせていたら何かよくないのではないかと思った。
全身緊張で強ばるし心臓はうるさいし気持ちは落ち着かない。
「おい紅野、こっち見てきてないか?それどころか…こっち来てない?」
「気のせいだよ」
沢木も気がついたみたいで僕にコソコソと伝えてくるが、知らんぷりが一番だと判断した僕は“気のせい”だと言った。そして自分にも言い聞かせた。
「ごめんごめん、“彼女”はいないよ。でも…」
「えっ…!?」
「俺、この子気に入っててこれからデートなの。ごめんねー。さ、行こう?」
何が起きているのか全く分からないうちにことが進んでいる。
僕は今、さっきのアルファ性の人に肩を組まれている。そして彼は僕のことを“気に入っている”と言った?
僕らは今初めましてなはずなのに、状況が理解できない。
「辞めてください」
危ない、この人はアルファ性だ。
しかも…僕が苦手なタイプの。
「ごめん、少し演技に付き合って」
誠人という人は耳元で僕そう囁いた。
沢木も突然のことに驚いて固まってしまっている。どうして周りに何人もいる中で僕なのか。
ずっと見ていたせい?
嫌だ、怖い、どうしたらいいのかわからない。
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