アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
14本目、ベンチ。
-
篠宮誠人。
彼から逃げてきてから僕はベンチに座っていた。早歩きをしていたために少し疲れてしまったのと、心の整理をつけるためだ。
大学内にはあちこちにベンチや休憩スペースが設けられているためとても過ごしやすいし、こういう時にはすごく助かる。
少し息が整ったところでスマホを手にした。
「…あ、返事がきてた」
『そろそろ新生活は慣れた頃?
今日もバイトの日だよね?お疲れ様。
そういえば今まで色々話してきたけど会ったことないね。
歩生くんが落ち着いたのなら今度会おうね』
長野さんからの連絡に気持ちが一気に軽くなった。
返事の内容にある通り僕たちは会ったことがない。どんな人なんだろうと考えたことはあるけれど会う機会は無かった。
今まで同じオメガ性として沢山の相談を聞いてもらった。
実際に会って感謝をしたい。それと顔を見て話してみたい。同じ性の人と目の前で話をしたことがなかったから長野さんとなら…会いたい。
『そうですね。僕も長野さんに会いたいです。
僕の方はだいぶ落ち着いたので都合が合う日に是非会いましょう』
僕は返事を送ってからベンチから離れた。
長野さんはどんな人かな、会える日が楽しみだなと考えた出してからさっきまでのことを少しの間だけ忘れることが出来た。
「あ…!紅野…!」
歩き出した途端に後ろから声がして、振り返るとそこには沢木が立っていた。僕を見るなり走って来て両手を僕の肩に置いた。
「いたいた、探した。大丈夫だったのかよ?」
「…うん」
大丈夫…だったのだろうか。わからない。
気持ち的には全然大丈夫なんてことはないけれど心配はかけたくない。
沢木は沢木で物凄く焦っただろうし、こうして駆けつけてきてくれたのだから。
「よかった。あいつは男女問わずらしいから気をつけとけよ」
「そ、そうなの?」
「まぁあくまでも噂だけどさ。何かあれば言えよ?じゃあ俺はバイト行くから」
沢木の噂話は大抵本当の話ばかりだからその話も本当なのだろう。
いくらなんでも僕のことを…なんてことはないと思っているが目をつけられたのは事実だ。
念の為に警戒をしておくことに越したことはないだろう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 595