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27本目、無くし物。
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26本目
ゲームセンターを後にしてそろそろ帰ろうかという話になり長野さんを駅まで送る。
「今日はありがとう。楽しかったよ」
「僕も楽しかったです。また予定の合う日に会いたいです」
「うん、会おうね。次は歩生くんの惚気も聞きたいな」
「えっと…あはは…そのうち…」
長野さんはまた優しく微笑むと僕の頭を優しく撫でてくれた。
その後「ふぅ」とひと息ついて真面目な顔をした。
「急ぐ必要は無いし、本当にこの人だと思える人でないとついて行っちゃダメだよ」
「…はい」
「歩生くんはどうもアルファ性やオメガ性を惹き寄せる力があるみたいだから…またアルファ性によって辛い思いをして欲しくないんだ」
「ありがとうございます。気をつけます」
長野さんは本気で僕を心配してくれている。
過去のトラウマから人に心を開けなくなっていたものの、長野さんや沢木…そして家族のお陰で今は何とか普通に過ごせている。
再びやっと手に入れたこの日常を壊したくない。壊されたくもない。
笹窪さんのことは信じているがあくまでもアルファ性だ。そして篠宮さんに関してはアルファ性がどうとか以前に警戒をした方が良さそう。
「…じゃあそろそろ行こうかな」
「はい。また連絡しますね」
「うん。ありがとう。またね」
お互い手を振り駅で別れた。
帰る家には大切な人が待っているんだと思うとなんだか羨ましく思える。
僕はひとり暮らしだから帰っても誰もいない。
「ただいま」も「おかえり」もない。
疲れていたり気が滅入ってしまうと寂しいと感じることもある。
「…そうだ、そろそろ薬飲まないと」
僕はカバンの中に手を入れた。
クリアファイルの間や小ポケットの中を探す。
「…あれ?」
どこにも薬が無かった。
入れていないとは思いつつもペンケースの中を探したりキーケースを開けたりもしてみた。
洋服やズボンのポケットにも手を入れてみたがやはり無かった。
どこかに落としたのか置いてきたのか…いずれにせよ薬が無いと非常にまずい。
薬局にいる薬剤師さんにオメガ性だという話をすれば裏から薬を出してもらえるが…周りの人にその場面を見られてしまったら危険だ。
病院で処方して貰うのが一番安全である。
けれど今から病院は行けない。必ず予約をしなくてはならないのだ。
僕ばかり急いで薬局へと向かう。
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