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44本目、朝。
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(…あれ?)
目を開けるとカーテンの隙間からは思わず目がチカチカしてしまう程の眩しい光が差し込んでいた。
あの後結局ハグされたまま寝てしまったみたいだ。
そして丁寧にベッドに運ばれ布団をかけられていた。
まだ目と頭が覚めていないせいで体が重いがなんとか引きずり立ち上がる。
腰やおしりにまだ痛みが残るものの歩けないほどではない。そして太ももに筋肉痛もあった。
「…いない? 」
寝室に暖さんの姿がないためリビングに行く。
しかしそこにも暖さんはいなかった。
キッチンや浴室、トイレにもいない。
机の上を見るも置き手紙とかもない。
カバンの中からスマホを出して確認するも長野さんからの連絡以外は何も無かった。
もしかしてやっぱり僕が嫌になって姿を消してしまった…?
けれどその場合ここは暖さんの家だから僕を追い出すと思う。
「暖さん…どこ…」
名前を言葉に出すと愛しさが溢れる。
今すぐ会いたくなる。顔を見て話をして手を繋ぎたい。
また撫でてもらって抱きしめてもらってたまに意地悪されて。
それでも楽しいと笑い合える暖さんが好きだ。
「暖さんっ…」
僕は玄関に行きドアに手を伸ばした。
その途端ドアが開いて手の置き所を失った僕は勢い余って前に倒れた。
「おっ!…と危ない、大丈夫?」
「暖さん…!」
咄嗟に支えてくれたのは片手に袋を下げている暖さんだった。
スウェット姿でメガネとマスクをしている。
そして空いてる片手で僕を抱えてくれた。
「おはよう、ごめん。朝食作るにも家に何もなくてコンビニで買ってきてた」
そう言いながら家に入り鍵を閉める。
「暖さんおはようございます…」
僕はそのまま抱きついた。
暖さんに会えた、おはようと言えた。
僕のことを嫌になった訳ではなかった。
「…歩生、薬飲もうか」
手を繋ぎキッチンまで一緒に向かった。
朝からまた触れられたことが嬉しくて、手をにぎにぎしてしまう。
暖さんも返事をするかのように同じ動きをしてくれた。それがなんだか面白い。
「…俺は起きてから薬を飲んだけど歩生は飲んでないからフェロモン垂れ流しだよ。発情期だから気をつけないと襲われる。薬飲んでる俺でも我慢出来なりそうだよ」
薬と水を渡され僕は素直に飲んだ。
確かに薬の効き目はきれてきてしまう時間だろう。オメガ性は厄介だからフェロモンを抑えなくては色んな人を意図せずとも惹き寄せてしまう。そうなると危険なのは僕自身だ。
“守らせて”
ふいにそう言われたことを思い出した。
言葉の通り優しくしてくれる。暖さんの言葉に嘘はない。
「お世話好きですか…?」
「うーん…そういう訳では無いけど弟がいるから慣れてるってだけ?」
「そうなんですか」
暖さんはお兄さんなんだ。
言われて納得するくらいしっかり者だ。
ひとりっ子で育ってきた僕にとって兄弟の存在は羨ましく思える。
友だちの影響もありずっと優しい兄が欲しかった。
けれど今僕には優しくしてくれる“恋人”がいる。
「体は平気?昨日は激しかったから…」
暖さんは僕の前髪を手でかきあげるとおでこにキスをしてきた。
「そ、そんなこと言わないで…激しかったとか…言わないで下さい…恥ずかしい…」
「…歩生本当に襲いそうになるから」
暖さんはため息のような笑みをこぼした。
暖さんにならいつ襲われてもいいですよ、なんて言ったら驚かれてしまうかな。
それに冗談はよしなさいと怒られてしまうかもしれない。
でも本当のことだ。暖さんとならなんでも出来る気がしている。
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