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53本目、お蕎麦。
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「いらっしゃい!」
旅館から歩いて五分くらいの蕎麦屋さんに入った。
声が大きく元気な店主さんのお出迎えがあった。そして若くお淑やかな女性が席案内をしてくれた。
「久しぶりに食べるなぁ。どうしようかな」
暖さんは僕が蕎麦がいいと言いそれに合わせてくれたけど他に何か食べたかったものはなかったのだろうか。
「…僕はこれにします」
「じゃあ俺も同じのにしよう。注文しちゃおっか」
初めてのお店だったからまずは定番のざるそばを選んだ。
メニュー表に載っていた写真がとても美味しそうだ。
店員さんを呼ぼうとキョロキョロすると、さっきの女性の店員さんが察してくれて駆け寄ってくれた。
「お決まりでしょうか?」
「ざるそばを二つ」
「ざるそば二丁ですね。かしこまりました」
店員さんが小走りでキッチンの方へ向かう。
他のお客さんが食べている音が聞こえる度に期待に胸が膨らむ。
「俺ねー…歩生といて楽しい」
急に暖さんがそんなことを言い出した。
改まって言われるとドキドキしてしまう。
「…僕は口下手だし人見知りだし何かとダサいのに」
「歩生はわかってないよ。可愛いよ。ほら」
そう言って見せられたのは暖さんのスマホ画面だ。さっき撮られた写真が本当に壁紙に使われている。
「変えてください…!恥ずかしいです!」
「変えないよ。これからいつでも歩生の笑顔を見てられるから」
僕の知らないところでも見られていると思うと恥ずかしすぎる。
僕も暖さんの隙をついて写真をいつか絶対撮る…!
「誰かに見られたら変に思われますよ」
「誰に何を思われても変えないよ。そんなの関係なく好きだから」
暖さんはスマホ画面を見つめながら微笑む。
目の前の僕じゃなくて画面の僕に微笑んでるはずなのに僕まで見られている気分で複雑だ。
「これをそんなに見られたくなかったら、目の前の歩生が笑ってよ。そしたら俺は歩生を見てるから」
「それも恥ずかしいです」
「わがまま」
また僕はからかわれている。暖さんには負けっぱなしだ。
でも悔しいって気持ちはなくて僕の心を満たすのは楽しい気持ちだった。
「いちゃいちゃしてるお兄さんたち!お待たせ!美味いからガッツリ食えよ!」
元気な店主さんがそう言ってテーブルの上に蕎麦を置いてくれた。
ざるに丁寧に盛られている蕎麦がとても食欲をそそる。
「美味しそう…いただきます」
「いただきます」
二人で蕎麦を食べだした。
いつもより少し高い蕎麦は今まで食べた蕎麦の中で一番美味しかった。
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