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56本目、シャワー。
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「わーやっぱ広い」
「すごい広いですね…」
中はとても広くて数種類もの温泉が存在している。
見ているだけでもウキウキしてしまう。
色づいている温泉や岩で囲われた温泉、宿泊する部屋の外にあった温泉よりも大きいヒノキ温泉など。
入口でキョロキョロと様々な温泉を眺めているうちに暖さんはもうシャワーを手に取っていた。
隣に座り僕もシャワーを手に取りお湯を出した。
(ちょうどいい温度かも)
手で温度を確認して調節をした後に頭からお湯をかける。
濡れて寒かったせいか全身ゾワッと鳥肌が立った。けれどその分温かさがとても身に染みるようで気持ちよかった。
そしてシャンプーを手に出して頭を洗い出す。
「歩生は頭から洗うんだね」
「頭からです」
「同じだ」
シャンプーが目に入らぬように気をつけながら暖さんの方を向いた。
暖さんは片目を閉じて僕を見た。
「やばい目に入った」
「早く流さないとですね」
「うん。これ結構染みるから気をつけてね」
「はい」
静かな中で僕らの声がそっと響く。
他には頭をわしゃわしゃ洗う音、シャワーの音、どこかの温泉のお湯が流れる音。
心地よい音に囲まれて気持ちが落ち着く。
「お風呂ってさ背後に気配感じない?」
「わかりますけど怖い事言わないでください」
「俺が守るから平気だよ」
冗談だとしてもその言葉が嬉しかった。
もしどこかでお化けや幽霊に出会ったとしたら、暖さんにはホラー耐性があるから本当に守ってもらわないと僕は怖さのあまり気絶してしまう。
「…守ってくださいね」
小声でそう呟くとキュッとシャワーが止まる音がした。
暖さんにも聞こえていたみたいですごくこちらを見てくる。
おばけじゃなくて暖さんに見られてる、それなら幸せだ。
「見てきすぎですよ」
「可愛いこと言うからだよ」
可愛いと思って言ったつもりはなかったが、いつもそんなつもりが無くても暖さんは僕のことをそう褒める。
可愛いって言われる度にドキドキと心臓がうるさくなる。
それが余計に暖さんを意識させる。
「体洗ってあげようか?」
「…嫌です」
誰もいないならまだしも、数える程度だけど人が温泉に浸かっている。
暖さんのことだから普通に洗うのみでは済まないと思い断ると、あからさまにショックそうな表情を浮かべた。
「えっと…あとで部屋についてる温泉にも入りたいです…その時なら…」
「…了解」
暖さんは少し間を空けてからニッと笑う。
その間に何を思っていたのだろうか。
多分想像ついてしまうのが恥ずかしくて今からソワソワする。
でもその時間が待ち遠しいな、なんていうこの気持ちは暖さんも一緒だろうか。
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