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68本目、反則。
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「はい、腕上げて」
「…自分で洗えますよ」
「ダメ」
そう言われ大人しく腕を上げる。
モコモコの泡を手に纏った暖さんがニッコニコで僕を見てくる。
多分なにか企んでいるのだろう。
「ここ」
「ひゃっ…!」
「くすぐったい?」
「ちょっと…!だ、暖さん…!あはは、ダメ、くすぐった…!」
やっぱり何かあると思っていた。
暖さんは僕の脇をくすぐると楽しそうに笑った。
腰も足も全部弱いから、それを暖さんに知られてしまうと今後何度もくすぐられてしまう気がする。
「ごめんごめん。ちゃんと洗うよ」
「全く…」
その言葉通り背中や胸、お腹などを丁寧に撫でるみたいに洗ってくれた。
人に体を洗われるのは幼い頃振りで今度は心が少しくすぐったい。
でも、大切にされているようで嬉しくもあった。
「こっちも」
「ひぁっ…あっ!」
暖さんが突然僕の下半身に手を当ててきて咄嗟に変な声が出てしまった。
恥ずかしくなり両手で口を塞ぐ。
完全に気を抜いていたから不意をつかれた気分だ。というより本当に不意をついてきたのだろう。
「なに今の声。可愛い」
「も、もう…!からかわないでください…!」
「洗ってるだけだよ」
「突然触られると驚きます」
「ごめんごめん」
暖さんはすぐにこうしてからかってくるけれど、僕は昔からこのくらい笑い合える仲の人はいたことが無い。
冗談を言い合ったりふざけ合ったり…本当は憧れていた。
だから今はとても楽しくて仕方ない。
「歩生、全体的に体が細すぎるよ」
「そうですか?暖さんも細いですけど…」
「そう?俺は…まぁ食事よりも趣味に時間を費やしてるからかもしれない」
そういえば暖さんの趣味はなんだろう。
誕生日は?血液型は?家族構成は?
好きな食べ物は?色は?動物は?
思えば何も知らない。
ひとつ知れたと思ってもまだまだ知らないことの方が多い。
そう思うと少し寂しくなるけれど、これから知れることが沢山あると思うとワクワクする気持ちもある。
「ゲームが好きでやり込んじゃうから食事と睡眠を忘れちゃうんだよね」
「意外ですね。インドア派ですか?」
「そうなのかな。でもどちらかと言えばインドア派かも」
「アウトドア派かと思ってました。僕もインドア派です」
「一緒だ、なんか嬉しい。また歩生のことをひとつ知れた」
僕も暖さんのことをひとつ知れた。
それはもちろんだけれど、僕のことを知ってはそう言ってくれるのも嬉しい。
ここまで僕を愛してくれる人がまさか現れるとは思っていなかった。
突然変わった日々は幸せな方向へ進み出しているようだ。
「インドアなら家とかでまったりしてるのが幸せかもね。今日もお出かけとはいえ海とか山じゃなくて近くの旅館だからね」
「たしかにそうですね。でも僕は暖さんとならどこに行っても楽しめると思います」
僕の体を洗う暖さんの手が止まる。
すると暖さんは俯き自分の顔を泡の付いていない腕で隠した。
「…暖さん?」
「…本当に、歩生は」
口元を腕で隠しながら顔を上げた暖さんは頬がほんのりと赤く染っていた。僕の言葉に照れたのだろうか。
そんな姿を見せられてしまっては僕まで照れてしまいそうになる。
「たまに言う事が反則だよ」
暖さんのそういうところも反則だと思う。
普段は僕をからかったり照れさせる側なのに、たまにこういう顔をする。
そんなのさらに好きになるしかない。
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