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75本目、和菓子。
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部屋に戻るまでの間は会話が無かった。
暖さんは少しボーッとしているように見える。
部屋に戻り着替えてからもその様子は変わらず、さすがに気になり声をかける。
「暖さん……?」
「なに?」
名前を呼ぶと、ふにゃりと笑って返事をしてくれた。体調が悪いとかでは無いらしく安心した。
「あの…さっきの話に戻る訳では無いんですけど、僕は本当に暖さんのことを暖さんとして好きです」
改めて伝えるには緊張してしまうけれど、僕の言葉で暖さんが安心してくれるのなら伝えるしかない。
「ありがとう。俺も歩生のことが大好きだよ、だから…」
暖さんは耳元に顔を近づけてきた。
「他のアルファ性と一緒にすんなよ?」
普段は温厚な暖さんの強気な口調に思わずドキドキしてしまう。さっきの緊張とは全然違う。
他のアルファ性…それはきっとオメガ性をバカにしたりする人のことを指すのだろう。
暖さんは違う、それは一緒にいればわかることだ。
オメガ性だからと下に見ることは無く、それどころかオメガ性だと言うことを忘れさせてくれるほどに同じ目線で接してくれる。
「もちろんです」
「うん、いい子」
そう言うと暖さんはキスをしてきた。
「ん……」
唇同士が軽く触れ合ったあと、口を開くと舌が入ってくる。
絡み合う音がクチュクチュと鳴りそれが余計に気持ちを昂らせる。
「んぅ……ん…」
「目、閉じないで……」
言われた通りに目を開ける。
この距離で目が合うと恥ずかしいのにもっと見たくなってしまう。
暖さんが僕のことを見つめていることが嬉しくて、それをずっと感じていたい。
「んっ…」
「おじゃましまー……あっ」
突如声がして急いで振り向くと、そこには大和さんが正座をして戸を開けていた。
「……や、大和さん」
「おじゃましますとか言って本当におじゃましちゃったね。それより二人とも、そんな濃厚な仲だったんだね、そうなんだね、いや俺はいいとおも「落ち着いてください大和さん」
あからさまに動揺している大和さん。
暖さんが一呼吸置いてから口を開く。
「歩生はオメガ性なんですよ」
「……あぁ、そうか。そうなんだ!よかったよ暖くんにとって大切な人出来て。しかもそれが歩生さんってことなら安心でしかないね」
大和さんはニッコリと笑いながらそう言ってくれた。
キスしているところを見られてしまいそれどころでは無い気持ちもあるけれど、僕たちの関係を喜んでもらえたのは嬉しい。
僕がオメガ性だと知っても大和さんはそこまで驚きはしなかった。
薄々感じていたのだろうか?
「…あの、ところで用件は」
「あぁそうだったね。お茶菓子の試食をしてもらいたくて来たんだよ」
「お茶菓子の試食?」
「そう。提供するかどうか迷っている制作真っ最中のお茶菓子があるからおふたりさんも食べてみて。あと感想くれると嬉しいかなー……」
大和さんはそう言うと、横に置いていたお盆を持ち立ち上がる。
そしてちゃぶ台の上に運んでくれた。
暖さんと一緒に見に行くと、お盆の上には小さなお饅頭や最中がのっていた。
パッと見ただけでも十個くらいはあるだろう。
「こんなにいいんですか?」
「どれも個包装だから好きな時に食べて適当な時に感想教えてね、じゃあ」
「ありがとうございます」
大和さんはそう言うと部屋を出て行った。
こんなにも貰ってしまい申し訳無い気持ちもあるが、正直嬉しい気持ちが勝っている。
さっきまでの恥ずかしかった気持ちは目の前の和菓子たちによって吹き飛んでしまった。
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