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82本目、知り尽くす。
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「大和さんに捕まってたのか。話し出すと長いでしょ」
「いえ、そんな…。楽しかったです」
「そっか。いいね」
「あはは…」
暖さんのことを本人の許可無く聞いたばかりに勝手に気まずくなる。
もしなかに暖さんが知られたくなかったと思うようなことがあったら申し訳ない。
知らないふりを僕は上手く出来ないだろう。
こんな性格だし、ドギマギしてしまうと思う。
「で、なに話してたの?」
「あっ…えっと…色々と」
「…色々って?」
暖さんは僕のことをじっと見つめてくる。
嘘をつく必要は無いと思うけれど素直にも言い難い。
けれど暖さんの話を勝手に聞いてしまったんだ。言わないと。
「…暖さんの昔のこととか」
「へー…知ったんだ?」
「…はい」
「ならお前を生かしてはおけない」
「えっ!?」
暖さんは僕のことを睨んだかと思えばすぐに笑いだした。そして僕の頭をポンポンと撫でる。
「なんて言うわけないじゃん、ビクビクしないでよ」
突然の冗談で一瞬真に受けそうになった。
いくらなんでも僕の命を奪おうとはしないと思うけれど…びっくりしてしまった。
「俺の話なんて聞いてもつまんないだろうになんでまた」
「暖さんのこともっと知りたかったから」
「…それわざと?」
「え…?」
「…んーん」
暖さんは優しく微笑んでいる。
その姿は夜の暗い中で明るく光る街灯に照らされいつもより大人っぽく見えた。
「…過去の暖さんも気になるけど、今やこの先の暖さんも気になります」
「そんなことは人には聞かないで歩生自身が見るといいよ。ね、この先のこととかは…」
「…この先のこと」
「俺はこれからも歩生のこと…俺しか知らないこともいずれは絶対見つける。知り尽くすまで、知り尽くしても離れないつもり」
「プ…プロポーズ…みたいに聞こえます」
真剣にそんなことを言うから僕は照れてしまう。
“知り尽くしても”ってまるで、僕がどんな人間であろうと関係なく愛してくれると言われているようで。
いや、きっとそういう意味を含めてくれているのだろう。
「そうだね。そう聞こえたのならそうなんじゃない?」
この距離だといくら暗いとはいえ、顔が紅潮してるのはバレるだろう。
でもそんな僕は暖さんにしか見せない、そう考えればもう恥ずかしいなんてことはない…のかな。
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