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92本目、お誘い。
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気持ちの整理が出来ないまま僕は昼頃に家を出た。
やっぱり気になる。キスをされなかった理由。
けれど僕はこんな性格だからあの場面で「して欲しい」なんて言えなかった。僕からすることだって出来ない。
そんな風に考えながら歩いているとあっという間に大学へ到着する。
(着いてしまった…)
「あ、おはよー!ってかもうこんちはか」
「わっ!びっくりした…」
心の中で深いため息をついた直後に後ろから賑やかな声がしてきた。振り向くとあまり会話をしたことがないけれど何となく顔と名前が一致している人たちがいた。
普段すれ違っても挨拶すらしない仲だと言うのになんの用だろう。
「あー、えっと歩生くん。今日飲み行かない?男だけで集まろっていうむさ苦しい飲み会があるんだけど歩生くん普段飲み会とか来ないじゃんか」
「たしかにたしかに。見かけないよね。今回はどう?同い年多いし話しやすいも思うよ?」
沢木の周りにいた人たちとはまた違う雰囲気だ。それとも沢木の交友関係は広いからこの人たちも友だちなのだろうか。悪い人たちでは無さそうだけれど取っ付き難い気がする。
「僕はそんな飲み会なんて場は似合わないって言うか…お酒飲めないし…」
その言葉に嘘はなく、ああいった僕とは真逆の人たちが集まり騒ぐ場面は苦手だ。行ったところで混ざれないだろうしぽつんと一人になるくらいなら行く意味が無い。かと言って僕から混ざりに行けるほどのコミュニケーション能力を持ち合わせてはいない。行くと決めた訳では無いのに想像するだけでもう気が重くなってきている。
「ちなみにお酒飲めない人もいるしなんなら普段来ないような人も来るから歩生くんもどうかなって…思って誘ったんだけど」
お酒が飲めない人もいる飲み会…それに普段来ないような人ということは僕みたいなタイプがいるのだろうか。
今まではバイトや嘘の用事で断ってきていたけれどそれなら行ってもいいかもしれない。
僕としても新しい友だちは欲しい。もっと明るくなって暖さんや長野さんを安心させたい。それに自分に自信を持ちたい。
「えっと…今日は特に用事ないから…少しだけ行こうかな」
「ええ!本当に!?よかったー行こう行こう!」
「今日の飲み会やたら人来るらしいから顔見知り増えるかもよ!さっきも言った通りあまり来たことない人とかね!歩生くんも来るとかいい日だわ~」
そんなにたくさんの人がいる場所に行くことは不安だけれど、僕はここ数日で考えることや行動が変わった気がする。
最初から決めつけるのは良くないと思ったから。僕が勝手に否定していただけで、本当はそんな嫌なことばかりではないかもしれない。
「じゃあまた連絡するからよろしくね」
「あ、うん…」
そう言うと彼らはワイワイと賑やかに去って行った。行くと決めたのは僕の方なのに今からもう緊張してきた。こんなことではいざみんなと対面した時に気絶でもしてしまうんじゃないだろうか。
(落ち着け…落ち着け僕…。大丈夫、ここ最近の僕は変われている。もっといい方向へと変わるんだ。その為には知らない世界を否定しちゃ行けない)
自分で自分を落ち着かせるために大きな深呼吸をしながらそう唱える。
今日の大学終わりにどんなことが待っているか…不安もあるけれどワクワクしている気持ちも少しだけど存在している。
その事に安心しながらまた歩き始めた。
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