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「そんなに遠くねぇ。今は国立病院に入院してる。あの病院、最近移転したの知ってるか?」
俺の戸惑いなど感じ取ってはくれないようで、男は顔を背けて口早に返答する。
「あ、はい。でも、国立病院行きのバスって、もう終わってるんじゃ……」
国立病院の移転先は病院以外は何もない最近拓かれたばかりの山手だ。
そんな辺鄙な場所であれば、診療時間内しかバスは運行していないし、おそらくは既に診療時間は終わっているはず。
「俺の車で行く。駅の駐車場に停めてあるから」
「えぇっ!?」
一メートル先を行く男が振り返る事もなく発した言葉に、驚きすぎて裏返る程の大声で叫んでいた。
な、なんで、見ず知らずのチャラ男の車に乗らなきゃならないんだよ!!
しかも、無茶苦茶な事やるような奴の車に乗るなんて、自殺行為だぞ!?
「……なんだよ。俺の車に乗るのがそんなに嫌か?」
いつの間にか立ち止まっていた男が、チラッと顔だけでこちらを振り返ると、先ほどとは別人のように肩を落として拗ねたような仕草を見せた。
「べっ、別に嫌って訳じゃ…」
あまりの変貌ぶりに、このひと大丈夫か、と逆に心配になって、気付いたら思ってもいない言葉を口にしていた。
「じゃあ、行くぞ」
「えっ?あ、ちょっと!」
ズンズンとこちらに歩み寄ってきた男に腕を取られて、引きずられるように駅へと連行されていく。
何度か抵抗してみたものの、いっこうに放してもらえない。
掴まれた腕が、痛くて熱くてどうしようもない。
「もう逃げませんからっ、手離してくださいっ」
強引に引っ張られて腕の付け根にも若干痛みを感じながら、離してくれと頼んでみるが、信じてもらえなかったようで捕らえられたまま約十分。
その間、人目を気にする余裕すらなく、ただただ腕の痛みに耐えながら男について行くのがやっとだった。
「今度は、安全運転でお願いしますよ?」
諦めて男の助手席に落ち着いた俺は、自分の身を守る為にシートベルトを慎重に着用して運転席の男へ懇願するよう目を向ける。
俺の不安などどうでもいいのか、ただ面倒臭いだけなのか、男はさっきから一度も俺と顔を顔を合わせようとしない。
「……ウッセーな」
相変わらず顔を背けたまま呟くような一言を発しただけて黙りこくっている。
「ねぇ!本当にお願いしますって!!マジでさっきみたいなの勘弁してくださいよ!!」
本当に冗談じゃない!!
これ以上、俺の不安を煽るな!!
怖くてどうにかなりそうだ!!
「だぁー!もうっ!わかった!わかったから離せ!!」
必死に掴みかかって懇願したおかげなのか、ようやくこっちを向いて怒鳴り散らしてきた。
そんな彼を見上げれば、顔をゆでダコのように真っ赤にしているではないか。
「……そんな怒らないでください。ってか、こっちが怒りたい位ですよ」
あまりの形相に、違う意味で恐くなって咄嗟に身を引き顔を背ける。
「ちっ、違う!怒ってなんかっ……」
急に肩を掴まれて引き寄せられると、何故か男の顔には焦りが浮かんでいた。
「……え?」
い、意味が分からない。
見つめ合ったまま首を傾げる他なかった。
end.
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