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<影―1>
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夢……絵空事ではなく本気で実現することを疑いもしなかった。誰もが実力を認めるスターの地位。女優や女と浮名を流す人気俳優。
それがどうだ?30代半ばで出演したドラマはたったの2本。刑事の聞き込みに答える住人役。主人公の同僚でセリフはたった一言。誰の印象にも残っていないようなエキストラに毛が生えたような役でしかない。
AVのほうがまだ知られているかもしれないな。女優にばかり目がいって、女を抱いている男優の顔なんか誰も覚えていないだろう。
クソな演出家のせいで、うだつの上がらない劇団に所属して芝居をする。オーディションでは「ハンサムだけど個性がないね」と言われる顔のせいで仕事にあぶれているが、女には使える。
「今は売れていないけれど、絶対人気俳優になるんだ」
そう呟いて夢を追いかけている男を演じれば食わせてくれる女がいる。「支える」という役柄に埋もれて喜ぶような女たち。
どんどん遠ざかる夢。
タチ役ならゲイビにだって出る、慣れればケツマンもなかなかいいものだ。最初は吐きそうだった男の味にも慣れた。金だと思えば咥えることだってできる。金はあるに越したことはない。
新宿のホモい奴ら御用達のラブホで撮影を終えて帰る途中に見かけた、偶然に。普通の男のフリをして歩いている。体つき、髪や目の色が違うが、間違いない。
「……蒼」
俺にも少し運が回ってきた。
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