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「あなたが此処にくるのは久しぶりですね。」
「ふっ」
おもわず笑ってしまった。知っているはずだ、この男が知らないことなんかない。
この店にこない理由くらい、とっくに掴んでいる。
「他に行くところができたもので。」
「らしいですね。ようやくリハビリの開始ですか。」
「一つ聞いてもいいですか?」
眉が片方あげられる。
普通の生活に戻って、恋をしろと言った。その相手に過去を打ち明けて捕まえておけ、そう言った。
恐怖や蓄積された画像で脅し続けて手元に置く方が管理しやすいだろう。恋愛に浮かれている状況は制御しにくいはずだし、逃げ出す人間だっている。(逃げることが可能だと仮定してだが・・・)
「わたしのような人間、あなたを斉宮と呼ぶような男に、恋愛や普通の生活をしろというのが腑に落ちない。『普通』に引きずられれば、それだけ過去を切り離そうとする。
それは危険を生みませんか?秘密が漏れ出し、貴方から逃げ出すかもしれない。」
「表面的にはね。」
斉宮はカウンターから出て、隣に座った。
「恋をするということは、守るべき存在を得るということ。それは強さを生みます。
そして弱点をつくることになる。
亡者のように「蒼」を追い求める人間が、あなたの「相手」をみつけたらどうすると思います?」
せりあがる苦いものを飲み込む。
宏之に危害が・・・・?
「そういうことです、あなたは相手を守ろうとするでしょう。そしてどこを頼りますか?
もちろん・・・私か桜沢です。そうそう言い忘れていました。吉川の一件で桜沢に私の身分の一部を知られることになったので、「prue」と権田の橋渡しは桜沢の役割になっています。」
「裕が?若頭は・・・。」
「ええ、いますよ。バカなままでね・・・。金も作れないくせに使うことは一人前という半人前が。
だから芳樹から取り上げて桜沢に渡したのです。」
「それって・・・。」
「まあ、どっちに転がるかわかりませんが、芳樹が執着しているのは「金」で「組長」じゃない。」
わたしが佐藤に恋をした、そのことがこれほどに影響するのか?
ヤクザの組織は沢山ある、それなのにどうして裕は権田を?
あのビルは権田のシマに建っていた。
あのビルに放りこまれた、わたし。
裕とわたし、そして斉宮・・・。この輪はどこまで広がっていく?宏之も飲み込むと・・・いうのか。
「まあ、そう絶望しないでください。ついでに言っておきます、私の血、半分ヤクザだと言ったの覚えていますか?」
「ええ、初めて逢ったあのホテルで・・・確かにそう言いました。」
「半分、それは権田です。」
「なんだって・・・・?」
「ボンクラ半人前と異母兄弟ってことですよ。」
全部自分の手のひらの上で転がしている・・・とでも言いたいのか?
斉宮の持つチェス盤は広大な面積をもっている。その上にのる駒はいったいどれだけの数だ?
その中の、わたし・・・裕。
「次は芳樹じゃなくてもいいと、私は考えています。もちろん組長もね。現にお飾りみたいな若頭に代わって、組を動かしているのは桜沢ですよ。この先どうなるかはまだ見えていませんが。」
「あなたという人は・・・。」
「さっきの話しに戻ります。助けを求める場をあなたが切るとは思えません。
今まで以上に私とともに歩くことになる。
そして、あなたが関わったカードの数々。
それを切る時、あなたが『普通』でいるほうが効力は増す、格段に。」
「あああ・・・そんな・・・。」
「おわかりになったようですね。「男娼」相手に悪いことをしても人はそう怒らないわけですよ。
男が風俗にいって女を買った。同じ部署の女子社員と不倫した。
どっちの写真が人を怒らせるかわかりますよね?もちろん後者です。だからあなたは『普通』でいなければならない。蒼ではない普通の男にね。」
笑うしかない・・・。
今日ここに来なければよかった。
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