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もうこれ以上長居する必要がない。『普通』という言葉は思った以上に動揺し喉が乾いてしまった。
残っていたジントニックを一気に飲み干す。
後ろで店のドアが開く、ちょうどいいタイミングだ。タンカレーのロックは次回にまわそう。
【コト】
おかれるロックグラス。
「あなたの好きな「No.10」です。もうこれはリハビリ済でしょう?」
「どうして・・・。」
「この店に何回来ましたか?そのたびにこのボトルを目にすると眉間に皺がよって、目の光が消える。
でも今日は違いましたね。あなたの相手は、なかなか優秀なようだ。」
この男に抵抗などできるはずもない。
わたしに許されていることは、緩められた手綱の中で自由なフリをすることだ。
「いらっしゃいませ、突っ立てないで座ったらどうです?」
「こんな時間に呼び出しやがって。」
「相変わらずですね。つまらない飲み会の代理参加とはお気の毒です。二流作家の愚痴から
解放されたお礼を言ってほしいぐらいですけどね。」
「まったく、本当にアンタ・・・盗聴器とかつけてないの?俺の行動が筒抜けで怖いよ。」
「あなたにアンタ呼ばわりされるのは不愉快です。」
「じゃあ、手短にお願いしますよ。サイ様」
サイ・・・と言った。ため息をつきながらカウンターに座る男。声からして若い、それに斉宮に対する言葉が乱暴すぎる。でも斉宮は怒るどころか楽しんでいる。
誰だ?どの程度の「パターン1」だ。
【コト】
わたしと同じように注文なしで出されるグラス。
好奇心を抑えきれず、横目で男を見た。
宏之より背が高そうだし若い。2歳か3歳か、その程度の差。
二重の目を長い睫が彩り、通った鼻筋が横顔を美しくみせている。
口角のあがった口元。
視線を上げると斉宮の目とぶつかる。
楽しげに眉をあげて-わたしの反応を見ていたのだろう。
質問は最後・・・だ。
黙って視線を棚のボトルに移して、タンカレーに手をのばした。
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