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《11》
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今日の飲み会はシュンの代理参加だった。センセイ方の定期的な集いらしいが、ようは過去の栄光を引きずった、かつての人気作家達の傷をなめ合う会。
そこに注目の若手を呼びつけ、あーでもない、こーでもないと言い募るらしい。
秋元さんは個人的にそれが大嫌いで、シュンを行かせたくないと連絡がきたわけだ。
今回の生贄に選ばれたのは「征寛 俊」
ドラマに映画化、海外に売れた映画化権、翻訳版・・・。
今やシュンは人気作家で、発行部数を叩きだせる貴重な存在になっている。
センセイ達の自尊心を傷つける材料はたっぷり・・・。
「格好よく毒はいてきていいですよ。」
秋元さんがそう言うから、気が楽になった。
■
5人の作家センセイの本は一冊も読んだことがなかった。
高校生の頃、アメリカに住まいを移したことを言い訳にする。
面倒なときはすべて「日本にいなかったもので。」といえば会話はそれ以上続かない。
好きな作家はすべて海外の名前をあげたが、センセイ方の趣味と合わなかったらしい。
会話は途切れる。
万事そんな調子で事はすんだ。
やがて俺への興味もつきて、放っておかれてホットしたものの、会がなかなかお開きにならない。
いい加減ウンザリして中座しようかと、様子をうかがっている時に聞かれたのだ。
「そういえば、征寛先生の特集か何かがあるらしいね。」
特集?聞いていない。取材はすべて俺がチェックして、シュンと相談して決めている。
顔だしはNG(未だに吉川への不安がぬぐえないからだ)対面式の取材もなし。もちろん対談もなし。
TVもなし。
「書いた作品を評価してもらいたいので」がその理由になっている。
『想い』の内容、俺との関係。シュンを知っている人間であれば「ユキヒロ シュン」のペンネームだけでも容易に推測できるはずだ。
俺達の関係のせいで、せっかくの作品が色眼鏡で見られるのだけは避けたい。
その申し出は出版社に受け入れられた。
「特集・・・ですか?」
「あれ?マネージャーさんも知らないの?」
秋元さんは俺をマネージャーとして紹介したらしい・・・。
「ええ、必ず私が取材申し込みや仕事の依頼に目を通します。特集といったものは来ていません。」
「そうですか。征寛先生の半生とベールに包まれたプライベートを明らかにするとか、そんなことを言っていたかな?じゃあ、あれはルポライターかもしれないね。
パーティーなんかで征寛先生を見たことがないかって聞かれたんだよ。
いやあ、人気者は大変ですな。
謎のベールに包まれていると捲りたくなるのが人間ですよ、ハッハッハ。」
その時電話が鳴った-相手はサイ。
出向いて聞かされたのは、センセイの話しを裏付けるものだった。
男の身元調査だけ、ありがたく受け取った後ケリは俺がつける。
サイに借りを作ったら、一生逃げられない、絶対だ。
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